長寿寺訪問記
(2005年9月7日)
今回ご紹介するお寺
「長寿寺」
は、横須賀線北鎌倉駅西口の県道を左に進み、踏み切りを過ぎ300m位先右の
鎌倉七口の一つ「国指定史跡亀ヶ谷坂」
(鎌倉市扇ヶ谷と山ノ内を結ぶ道) 角の石段を登った所に茅葺の山門が見えます。
境内は公開されていません
。
北鎌倉駅から、徒歩10分位です。
所在地:鎌倉市山ノ内1503
県道から見上げる長寿寺山門
北鎌倉駅を建長寺方面へ、横須賀線踏切を渡り横断歩道の信号右石段上に山門が見えます。長寿寺は公開されていないので境内には入れません。
台風14号が九州に上陸し、日本海を通過中の平成17年9月7日午前に、ご住職にお時間を頂き色々とお話を伺わせていただきました。
本堂を新築するので、8月30日地鎮式が行われ、建築地には地縄が張られ四隅の柱基礎に埋められる、お経の書かれた石が置かれていました。
歴代住持・檀信徒積年の悲願であった、本堂を再建するにあたり、本堂再建の趣意書が必要となって色々な資料を調べ「長寿寺」の歴史をまとめました。
足利尊氏は、建武三年(1336年)御教書を長寿寺に下付し、長寿寺を諸山に列したとあります。したがって、長寿寺の創建はそれ以前と言う事になります。
足利尊氏の法名は、関東では「長寿寺殿(関西では等持院殿)」と称するので、長寿寺の開基が足利尊氏だと言う説があっても不思議ではありません。
一方、当寺の「しおり」(略縁起のページ参照)にも書いてあるように、長寿寺の開基は
足利基氏
で、基氏は父の足利尊氏の菩提を弔うため、 その邸跡に長寿寺を創建したと言う説もあります。
その場合、創建年次は延文三年(1358年)と言うことになります。
開山は「古先印元(こせんいんげん)」です。古先印元禅師は、徳の高い方で諸国のお寺で住職を勤められたあと、鎌倉の浄智寺、円覚寺の二十九世、建長寺の 三十七世の住持を勤め、晩年は当寺に隠棲し応安七年(1374年)八十歳で逝くなりました。
本堂四隅の柱下に埋める為、石に般若心経を書きました。石の大きさも色々ありますが、お経を書くときは集中しているので全文字がきちんとバランスよく収まります。
↑:本堂建立地全景
↑:四隅の基礎に入れるための
般若心経が書かれた石
↑:ご住職の説明
↑:完成予想図
本堂の再建計画は、数年前から具体化しました。設計士に、住職の考え・願いやイメージを伝え理解してもらって、図面化しました。この図面がそうですと、図面を開き丁寧に説明して下さいました。
本堂の柱は東濃の檜材、棟木は松材を使います。檜は数年間乾燥のため、工事を施工する伊豆の工務店で養生をして、いま、加工が始まったところです。
観音堂もそうですが、室町時代の建築技法で太い柱を細く見せるように面取りをして上品に仕上げる工夫をしています。
本堂の寸法は京間(一間を6尺5寸)にしました。本堂・広縁や廊下も畳敷きでバリアフリーにしました。本堂の広間や廊下を畳敷きにしたのは、ここで法事のときに食事が出来るように するためです。食事をするにはやはり畳が一番落ち着きます。
欄間には竹節欄間や、弓欄間を使います。
その他、本堂でお通夜や葬儀もできるように、多目的に利用できる工夫を色々しています。
↑:大正時代に建てられた書院
↑:植木で凡字を書いたお庭
書院は大正時代の建物で、建具などはその時代のものです。クリアガラスがゆがんで見えるのも、趣きがあり今では手に入らないのではないでしょうか。
書院から見たお庭は、[梵字]で(キャ・空)(カ・風)(ラ・火)(バ・水)(ア・地)と植え込みで造られ、こちら側が此岸(現世)で、向こう側が彼岸(悟りの世界) を現した庭園です。
観音堂は、奈良県の古刹忍辱山園成寺の多宝塔を大正時代に改造移築したものです(トップページに掲載)。室町時代の様式を残し柱なども面取りしています。
ご本尊の「聖観音菩薩(写真集のページへ掲載)は桐の一本彫です。背後の絵は「迦陵頻伽(がりょうびんが)」の鳥で、良い感じが時代を感じさせます。
↑:観音堂天井に描かれている絵
観音堂裏のやぐらには、足利尊氏のお墓と、歴代住職のお墓があります。足利尊氏は逆賊ということで、お墓を子供たちに破壊させた時代もあったそうです。
(五輪等の端々が欠けていて変形している)
お庭を歩きながら「庭は20年ぐらい前に自分で造りました。造ったときは失敗かなと思いましたが、 人間と同じで時がたつとそれなりに落ち着いてきますね」と話されていました。
(編集子注:境内のお庭は写真集のページに掲載しましたので参照ください)
境内は、県道から5〜6メートルぐらい高いだけで喧騒も聞こえず素晴らしい環境です。 新築される本堂から見る、建長寺背後の山並みはとても素晴らしいものと期待しています。
この環境が守られれば、本堂で写経などの集まりを開いても良いかなと考えています。
追記
長寿寺は、非公開のため檀信徒以外は境内に入ることが出来ませんが、ご住職が丹精をこめて造られたお庭は 手入れも良く、沢山植えられている「牡丹(約250本)」や「さつき」の時期には、見事な景色が境内一杯に広がって 綺麗な公園のようになっているのではと、想像しながらおいとましました。
帰り際に、ご住職が 美味しいお酒を造る酒蔵に造らせた「長寿寺」ブランドのお酒を頂きました。
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