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編集部員のリレー随筆(69)

全国 変わり種共同浴場(その11)

全国各地の共同浴場を訪ね歩いて16〜7年になります。
ここでいう「共同浴場」とは、熱源が温泉で、誰にでも公開している(誰でも希望すれば入ることのできる)浴場をいいます。
源泉が共有で近隣住民が維持管理をする浴場が典型的な共同浴場ですが、私営もしくは公営の銭湯(公衆浴場)も共同浴場に含めています。
主に全国の温泉場に見られますが、青森県の各市、長野県諏訪市、大分県の別府市や、熊本県の菊池市・山鹿市・人吉市、鹿児島県鹿児島市のように市街地の至る所に公衆浴場や日帰り温泉施設として点在する都市もあります。
このレポートは変わり種共同浴場の第十一弾です。

目次
青森県 むつ市 恐山境内・冷抜の湯
新潟県 阿賀野市 出湯温泉・華報寺温泉共同浴場
福島県 いわき市 いわき湯本温泉・みゆきの湯

○ エッ? お寺の境内に共同浴場?

■ 恐山温泉・冷抜の湯(ひえのゆ)

青森県むつ市の恐山は日本三大霊場の一つとされ、慈覚大師が開山したといわれています。
恐山は下北半島の中央部位置するカルデラ湖の宇曽利湖を中心とした荒涼とした景色の場所です。この恐山が霊場の名称であり、寺院の山号になっています。寺名は菩提寺です。

霊場恐山
(霊場恐山)

恐山の境内には、現在四カ所の共同浴場があり、筆者の入ったのはそのうちの冷抜の湯(ひえのゆ)という共同浴場です。

冷抜の湯(ひえのゆ)は神経痛、リウマチなどに効くと云われ、筆者が訪問したときは共同浴場は男女別に一カ所づつでした。現在は合計四カ所の共同浴場があるそうで。霊場の入山料(500円)を支払って境内に入れば、このうち三カ所の浴場は無料で入浴出来ます。
因みに冷抜の湯は男湯、薬師の湯は女湯、古瀧の湯は男女入れ替え制、花染の湯は混浴となっています。

冷抜の湯
 
浴室
(冷抜の湯)
(浴室)

冷抜の湯の建物は木造の小屋で、内部は脱衣場と浴室は一体型となり、浴槽は建物の中央にあります。とても風情に富んだ典型的な共同浴場のたたずまいです。
白濁の湯はややぬるめで、長湯がおすすめです。


さて、恐山の境内ですが、総門や他の建物の荘厳さと、荒涼とした賽の河原が印象的です。
恐山は夏の大祭の時などに イタコ(いたこ)が死者の御霊を呼び口寄せを行なうことでも有名です。また、冬期は入山出来ません。

山門
 
賽の河原
(山門)
(賽の河原)

境内全景
(境内全景と宇曽利湖)

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■ 出湯温泉・華報寺温泉共同浴場

華報寺共同浴場は阿賀野市の五頭温泉郷(ごずおんせんごう)の中にある出湯温泉(でゆおんせん)にあります。この地区は白鳥の飛来で名高い瓢湖の近くなので、白鳥を見に来た観光客などが泊まることもあるそうです。

華報寺温泉共同浴場は五頭山華報寺の本堂の右側に隣接しています。
華報寺は現在は曹洞宗に属していますが、弘法大師ゆかりの寺とされ、五頭山は修行の山ということです。

華報寺
(五頭山華報寺本堂)

共同浴場は本堂の右側にある平屋の鉄筋コンクリート建ての建物です。階段を数段上ります。 入浴券の券売機があり、200円の件を購入して中に入ります。
畳を敷いた脱衣場とその奥のタイル張りの浴室との質素な共同浴場です。

華報寺温泉共同浴場
 
脱衣場
(華報寺温泉共同浴場)
(脱衣場)

浴室内は一つの浴槽を囲んで洗い場があり、浴槽内でくつろぐ人と洗い場で身体を洗う人が結構多い共同浴場です。

浴槽
 
注意書き
(浴槽)
(注意書き)

お湯は単純温泉で、湯温がやや低いので長く浴槽内にとどまる人も多く、見知らぬ人が入っていると話しかけられます。共同浴場マニアで写真を撮りに来たというと全員が賛同してくれてモデルになってくれました。
ただ、浴室内は湯気が多く、どうレンズを拭いても水蒸気をぬぐうことが出来ずぼけた写真しか撮れませんでした。

出湯温泉には、数軒の旅館と数軒の民宿と「出湯温泉共同浴場」という共同浴場があります。



(注)筆者が知る限りではお寺の境内に共同浴場があるのは上記二湯の他は
  1. 奥日光の日光湯元温泉にある温泉寺
の一カ所です。

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○ エッ? 共同浴場に介護浴室?  いわき湯本温泉・みゆきの湯

いわき湯本温泉・みゆきの湯はJR東日本の常磐線の湯本駅の駅前にあります。
建てられて間のない共同浴場で、駅前という利便性の良さから地元に限らず多くの人が訪れます。

湯本駅からは、フラガールで名高くなった「スパリゾート・ハワイアンズ」に行く無料送迎バスが出ています。ハワイアンズは 3キロほど離れた場所にあります。
また、みゆきの湯のほかに、徒歩圏内で「さはこの湯」と「上の湯」という二カ所の共同浴場があります。いわき湯本温泉は共同浴場に恵まれた土地といえます。

このみゆきの湯に、なんと誰でも条件を満たせば入ることができる介護浴室があるのです。
その介護浴室については、この随筆の最後の部分で詳細にレポートします。

いわき湯本温泉・みゆきの湯
(いわき湯本温泉・みゆきの湯)

玄関を入ると受付があり、その先に男女別の浴室があります。

男湯ののれんをくぐると、木を多く用いた脱衣場になっていて、大型のロッカーが並んでいて、旅の荷物なども収納できますのでとても使いやすく、また木製の棚には脱衣籠もあり使いやすい脱衣場になっています。

浴室は、石造りで、洗い場の床と浴槽の底は滑りにくい十和田石(大谷石のような肌の石)が使用されており、浴槽の縁取りは御影石です。木の壁とマッチして雰囲気の良い浴室です。

脱衣場
 
メインの浴槽
(脱衣場)
(メインの浴槽)

浴槽は2槽あり、手前が熱め奥がぬるめの浴槽で好みの浴槽を選ぶことが出来ます。
薄褐色で透明のお湯はほんのりとたまご臭がします。奥の湯口のお湯を舐めてみると、苦渋みを感じます。浴感は肌をやや刺激する感じで、ヌルすべ感は全くありません。
でも、とても良くあたたまるお湯で、名湯という名前に恥じないお湯です。


ところで、このみゆきの湯には、男女浴室とは別に介護浴室があるのです。

介護浴室について
    介護浴室は、つぎのような優れた点があります。

  1. まず、誰にでも利用できる点です。いわき市民とか福島県民でなくても利用可能です。
  2. 次に、専用車いすが天井走行のレールでつりさげ可能な点です。
  3. 更に、1時間という単位で貸し切り状態になり、入浴料は介護する人を含めて1人220円という、男女浴室と同じ入浴料金という点です。

ただし、以下のような条件を満たす必要があります。
介護浴室
(介護浴室)
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著作権者:ぐるっといわき(無断転載はお断りします)
介護浴室は以下の要件を満たす人が1時間単位で独占使用出来ます。
(利用詳細は直接問い合わせください)
  1. 身体障がい者手帳をお持ちの方
  2. 療育手帳をお持ちの方
  3. 要介護認定を受けている方
  4. その他これらに準ずる方
設備は、浴室の天井のレールに設置したリフトからの椅子に座ったままで入浴できる浴場で、一緒に入浴できる人が付き添うことが条件とのことです。
入浴料金は介助する人を含めて1人あたり 220円です。
介護浴室の予約は次の番号です。電話:0246-43-2175



(若干の情報)
場所電話
むつ市観光協会・恐山
0175-23-1311
ぐるっといわき
0246-43-1526

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制作:ひろさん



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