![]() 編集部員のリレー随筆(58) 全国 変わり種共同浴場(その7)制作:ひろさん
○ エッ? 温泉場に赤丸ポスト? (銀山温泉)山形県尾花沢市にある銀山温泉は江戸時代に銀山が盛んな頃開湯した温泉場です。![]() (銀山温泉の木造高層温泉旅館) 康正年間(1456年頃)の銀鉱発見ののち、最上氏の家臣延沢氏の領有下の慶長時代に銀の採掘が稼働し、元和八年(1622年)山形城主の鳥居氏の支配下にあって採掘が盛んになったとのことです。しかし、正保四年(1647年)より産銀は減少し寛文十一年(1671年)には閉山同然となったといわれています。 鉱脈はいくつか変遷し、最盛期には2万人の人口を誇りましたが、銀採掘が廃れると、湯治場として温泉場が栄え、大正時代の木造高層住宅が建ち並ぶ温泉街が現在に残されたということです。 銀山温泉にはかじか湯としろがね湯の2箇所の共同浴場がありますが、赤丸ポストは温泉街に流れる銀山川の最上流土産物屋前にあります。 どうも、土産物屋の宣伝の一環としてどこかからか移設したような感じです。
赤丸ポストは大正/昭和時代の懐かしさを演出するには格好の郵便ポストです。 かじか湯 2軒ある共同浴場から、かじか湯を紹介します。もう1軒は高名な建築家の隈健吾氏の設計ですが典型的な共同浴場というにはいささか冒険的な印象です。 かじか湯は赤丸ポストから下流に150メートルほど下った温泉街の真ん中にあります。 共同浴場の建物は雁木のように川沿いの通路を覆っているので対岸から写真を撮りました。
かじか湯の浴槽は 4〜5人が入ることの出来る大きさで、木製の湯口からお湯が注がれています。 硫黄臭のあるお湯はやや熱めですが、良くかき混ぜるとさほど熱くはなく、また、水道の蛇口も源泉の湯口の脇にあるので、自分でコントロール出来ます。 ひっきりなしに来る入浴者で、かじか湯はいつも混んでいます。 このページのTop ○ エッ? 伊香保の階段に赤丸ポスト? (群馬県渋川市・伊香保温泉)群馬県渋川市にある伊香保温泉は天正4年(1576年)、武田氏の配下にあった木暮氏ら七氏が傾斜地を利用して温泉街を形成したのが始まりです。![]() (伊香保温泉の石段) 私の好きな作家の一人の佐藤雅美の「花輪茂十郎の特技−八州廻り桑山十兵衛」(文春文庫)から、少々長くなりますが引用すると、
という成り立ちです。 えんえんと続く石段の下にお湯のラインが敷かれ、両側に土産物屋、飲食店などが軒を連ね、平地があると温泉旅館が建っています。 伊香保には公開されている共同浴場は石段の湯の1軒のみで、石段の下部にあります。 一方、赤丸ポストは、石段のかなり上部にあり、石段をそぞろ歩く観光客に向かって微笑んでいます。
石段の湯 さて、石段の湯は石段の下段の方にあります。 石段の湯はリニューアルされてからさして年数が経っていないので比較的新しく、観光客の人気も高く、いつも混んでいます。 脱衣場は清潔で、浴場に入ると洗い場と浴槽があり、石造りの浴槽には、ライオンの顔の形をした湯口から茶褐色の湯が流れ込んでいます。
浴槽は10人程度は入れる大きさで、鉄分の強いお湯はぬるめです。 伊香保温泉には、町の人のみが入ることの出来る、地元民専用共同浴場は何ヶ所かあるようです(このての浴場を「ジモセン」と呼ぶ人もいます)。 少なくともある時間帯は、一般観光客に公開して欲しいという要望もあるようですが、観光客の中にはマナーが悪く、浴場を穢したり破壊したり、備品を盗んだり、する人も居ると地元の人は容易に公開に踏み切りません。 このページのTop ○ エッ? 御夢想の湯の前に赤丸ポスト? (群馬県中之条町・四万温泉)![]() (御夢想の湯と赤丸ポスト) 群馬県にある四万温泉は、開湯伝説がいくつかあるようですが、記録にある開湯は、 永禄6年(1563年)にはじめて宿が開業して、徐々に温泉街が形成されていったといわれています。 1954年、酸ヶ湯温泉、日光湯元温泉とともに国民保養温泉地第一号に指定されました。 四万温泉は、温泉街は5つの地区に分かれています。四万川の流れに沿って上流から、日向見、ゆずり葉、新湯、山口、温泉口の 5地区です。 共同浴場は4箇所あります。河原の湯(新湯地区)、御夢想の湯(日向見地区)、上の湯(山口地区)、山口露天風呂(山口地区)の4箇所で、それぞれ寸志の志納金で入浴出来ます。 この他に中之条町営の四万清流の湯があります。 これら5箇所の浴場はそれぞれ個性的で、好みによって入れば良いのですが、一番上流の 御夢想の湯は赤丸ポストが近くにあり、浴場の内部も個性的で、浴槽などは豪勢な石造りです。 御夢想の湯は日向地区の駐車場に面しており、目の前に無料の足湯があります。 ここには、重要文化財の「日向見薬師堂」もあり、この薬師堂は群馬県最古の建築物だということです。 御夢想の湯はリニューアルされたばかりで、湯屋建築を模して作られています。 玄関を入ると、四万温泉の開湯神話が書かれた木の掲示があり、寸志を支払う志納箱があります。
脱衣場の入口から中に入ると狭い空間に脱衣用の木製棚が4人分あります。 そして、この場は、階段の下り口で十段ほど下に浴場があります。 浴場は床が石造りで、浴槽も黒御影石で出来ているのです。しかも、この石は継ぎ目がない一体物で丁寧に削って、丁度2人が横になって足を伸ばして入れるようになっています。 ![]() (御夢想の湯浴槽) 源泉が肩のあたりに流れ込み、足の方から掛け流されて洗い場に流れます。 窓が大きく、沢のせせらぎの音と木々の緑が降り注ぎ、ゆっくりと湯に身体をゆだねる至福の時は他に代え難い体験です。 ですが、2人しか入れないので、待っている人が目の前に立つとゆっくりと入っていられないという共同浴場です。 お湯は四万(種)の病気に効くというカルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉(石膏泉)で、源泉温度は56.6度です。飲めば胃腸にも卓効があるということです。 このページのTop 編集部員リレー随筆リスト ![]() |