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編集部員のリレー随筆(38)

全国 変わり種共同浴場(その2)

制作:ひろさん

先にご報告した変わり種共同浴場に続いて、やはり全国にある変わった共同浴場を3カ所ほど紹介します。
ここでいう共同浴場は、誰でも入ることが出来、熱源が温泉で、主として温泉場かその近くの場所にある浴場をいいます。


目次


○ エッ? JRの駅舎が共同浴場? (ほっとゆだ)

JR北上線は東北本線/東北新幹線の北上駅(岩手県)と奥羽本線の横手駅(秋田県)を結ぶローカル線です。

この北上線の陸中川尻駅が「ほっとゆだ」という駅名に変わったのは1991年のことです。
「ほっとゆだ」駅は昔からある岩手湯本温泉の下車駅でもあります。

この駅名からもわかるように、駅舎は温泉施設に生まれ変わりました。


ほっとゆだ駅舎
(ほっとゆだ駅舎)

駅舎は木造のかっこよい建物です。
駅舎の一部(写真の右側)が出札口/改札口ですが、大半は日帰り温泉施設です。

入浴料金を払って中にはいると、脱衣室や浴室はふつうの温泉施設と同じですが、浴室の壁には信号機が設置され、青、黄、赤の信号が灯るようになっています。


ほっとゆだ浴槽
 
浴室の壁の信号
(ほっとゆだ浴槽)
(浴室の壁の信号)

信号機の説明版には、
  • 青色 発車時間の45分前 〜 30分前まで点灯
  • 黄色 発車時間の30分前 〜 15分前まで点灯
  • 赤色 発車時間の15分前 〜 発車時間まで点灯
  • 無灯火 上記以外の発車時間に点灯
とあります。

信号機の説明
(信号機の説明版)


浴室内には大小3つのタイル張りの浴槽あって、中央が大きく、大きな浴槽には円形のタイル張り源泉槽から源泉が流入しています。この浴槽には「あつめ」と表示されており、その左側はやや小さめの泡風呂です。
右の小さな浴槽は浅く、横たわって入るようになります。
浴槽の反対側にはカランとシャワーが設置されています。

お湯は無色透明で、泉温は64.1度。
成分分析表によるとナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)だそうです。さっぱりとした入り心地です。
泉温が高いため加水され、循環使用のため若干のカルキ臭がします。

ほっとゆだにはJR利用客はもちろん、車で来た観光客も結構多く入っています。経営している第三セクターはこの温泉施設も含めて黒字を出しているのでしょうか?。

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○ エッ? 百貨店に共同浴場? (なごみの湯)

長野県諏訪市のJR中央本線の上諏訪駅前に五階建ての百貨店があります。

創業1964年の「諏訪丸光」が会社更生法により「まるみつ百貨店」に生まれ変わり、創業以来の天然温泉の入浴施設も二年間の閉鎖の後、2004年に復活しました。

浴場の名は「まるみつ温泉・なごみの湯」。

まるみつ百貨店
(まるみつ百貨店)


まるみつ温泉なごみの湯は同百貨店の五階にあります。

エスカレーターで五階に行くと、下りた先にホテルのロビーかゴルフ場の受付のようななごみの湯受付があります。


なごみの湯受付
 
脱衣場
(なごみの湯受付)
(脱衣場)

なごみの湯の脱衣場もゴルフ場のロッカールームのように全て鍵付のロッカーになっています。

浴室に入ると石造りの床に大型タイルの壁という豪勢な浴室で、長方形の木の縁取りの浴槽と大きな樽型の浴槽が並んでいます。
ただし、窓がないので若干の閉塞感が無いわけではないのですが、お湯に入るととろりとしたお湯に疲れを忘れます。


長方形の浴槽
 
樽型の浴槽
(長方形の浴槽)
(樽型の浴槽)


お湯は無色透明のアルカリ性単純泉で、源泉の温度は58.2度。

ほのかな温泉臭がただよう掛け流しの温泉は、駅前という立地条件もあり、新宿行きのあずさ号の待ち合わせ時間にも利用する人がいるということです。

なお、諏訪市(上諏訪温泉)にはおよそ88ヶ所の共同浴場がありますが、その大半は一般人お断りの地元民専用の共同浴場で公開されている共同浴場は10ヶ所程度です。

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○ エッ? 競輪場に共同浴場? (競輪温泉)

温泉大国の大分県別府温泉には多くの変わり種温泉がありますが、別府市営の競輪場にある市営「競輪温泉」もユニークな共同浴場と言えます。

これまで、競輪場に足を踏み入れたことのない筆者は、見るもの聞くもの全て初めての体験でした。

競輪温泉の建物は競輪場の施設とは独立して、駐車場の南側にあります。
競輪に来る人はほとんどが車で来るので、大きな駐車場があるのですが、その一角に二階建ての鉄筋の建物があります。

競輪温泉はこの建物の一階の左側です。

競輪温泉の建物
 
入り口
(競輪温泉の建物)
(入り口)

競輪温泉は、競輪を開催しているときと開催していないときでは入浴料金が異なり、競輪開催日は入浴は無料で、開催していないときは他の別府市営の共同浴場並の ¥100 という料金設定です。

脱衣場には木の脱衣用棚とコインロッカーがあります。

浴室はかなり広いのですが、競輪開催日は人の出入りが激しく、5〜6人が入れる浴槽は常に一杯の人が居るという印象です。
別府では、他の共同浴場もそうですが、さっと来て、さっと湯浴みし、さっと出て行く人が多いのですが、ここに来る人は湯上がりにまた勝負をするのでしょうか。

競輪温泉の浴槽
 
競輪温泉の脱衣場
(競輪温泉の浴槽)
(競輪温泉の脱衣場)

お湯は単純泉でかなり熱く、うめるために水道の蛇口から誰かしらが水を入れています。
一緒に入っている人たちはその日のレースについてあまり語り合わないようでした。

別府競輪場でもう一つ驚いたことは、食堂街と称して別棟の食堂街があって、気軽に食事が出来ることでした。
長屋形式の食堂街では、飲食店5軒がしのぎをけずり、早く、安く、ボリューム満点を目指して営業していました。競輪の選手以上にスピードを競う食堂街のようです。

成田屋という店に入り、家人と二人だったので「とり天定食(¥600)」と「やきそば(¥500)」を頼み昼食を楽しみましたが、ビールは缶ビールでした。
競輪の敷地内では瓶類のアルコールは許可されないのだそうです。
瓶が割れて事故でも起こしたのでしょうか。?

食堂街の成田屋
(食堂街の成田屋)

なお、別府市は共同浴場数が全国一多く、およそ180ヶ所を数えます。

その半数ほどは非公開ですが、町おこしのため、毎年非公開の共同浴場を数日間は無料で公開する行事が始まり共同浴場好きが全国から集まります。

別府八湯スパポート
(別府八湯スパポート)

また、旅館の浴場も含めて、88ヶ所の認定浴場を廻った人に名人位を授与する制度「別府八湯温泉道」があり、筆者は29湯を入り三段の段位を授与されています。

競輪温泉も別府市役所指定の認定浴場ですが、筆者が訪れた際は管理人が不在で別府八湯スパポート(パスポートの代わりのスタンプ帳)にハンコはもらえませんでした。

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