友人を悼む

12月の絵  木の葉が色づく秋の気配が、今年はなかなか漂ってこなかった。十月は雨が多く、例年より暖かな日が多かった。二十日すぎ頃、急に寒い日があったが、翌日はもう五度位温度が上がってしまうような、不順な気候だった。今年の夏は滅法暑い日がつづき、久しぶりに夏らしさを感じたが、総じてこの数年暖冬だ冷夏だ空梅雨だと、異常が多すぎるようだ。

 十月の上旬、同年の友人の死に出あった。中学生の頃からだから、五十年のつき合いだ。夏頃から、かなりよくない状態だとは聞いていたが、退院直後の八月の初めに会ったきりで、十月八日知らせがあった時は、もう死の直前だった。気丈な奥さんは、病状を誰にも言わなかった。
 おまえの家は、葬式の時棺を出しにくいな、などと酒の肴に冗談を交わし合い、心配するな、オレがおまえの葬式はとりしきってやるよ、と言っていたのが冗談でなくなってしまった。実は、十月十日に飛騨高山の祭りに行くつもりで、すっかり準備していたのが、すべてキャンセルの羽目に到った。本人が秋のお彼岸の頃のある日、奥さんにはっきり言い置いていたそうで、死人に口なし、反論の余地はなかった。葬儀の日は、不順な中の、肌寒いような氷雨の日であった。

 お互いとしをとって、会えば口喧嘩ばかりしていたが、死は一瞬にしてすべてを取り去ってしまう。旅行に行けなくて、気の毒だったなあ、あいつのそんないやみももう聞けなくなった。・・・日毎に寂しさがつのる。

鎌倉ケーブルテレビ広報誌
「チャンネル鎌倉」
平成6年12月号掲載
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