焼酎礼讃

2004年02月28日  数字的裏付けなどない、全くの当てずっぽうだが、近頃又焼酎の人気が高まっているようだ。又、というのは、もう大分古いことではっきり年代は覚えていないが、吉四六(きっちょむ)、という麦焼酎が有名になって、陶器の一升瓶が珍しがられて、一時酒屋で品切れになったりしたことがあった。バブルがはじけて、サラリーマンの懐が寂しくなった頃だったかもしれない。
 いっぱい呑むか、と言えば焼酎に決まっている熊本、鹿児島地域(更にそれ以南も含めて)は別として、関東では、以前は居酒屋で焼酎を注文するのはちょっと気が引けたものだった。それが今では、居酒屋どころか一流の料亭さんでも殆ど用意されている。寧ろ日本酒党より焼酎党の方が多いかもしれない。焼酎派の言い分は、翌日のサケの抜けがいいという点である。確かに日本酒の方が、翌日までアルコール分が抜けにくい。値段も間違いなく焼酎の方が安い。これも独断で、高価な焼酎もあるかも知れないが。
 然し、うまいまずいかとなると、やはり日本酒に軍配を上げざるを得ない。自他ともに許す、は少々気恥かしいが、日本酒党を自認する私だから、公正と言い難いかも知れないが、いままで関東で呑まれていた麦やそばの焼酎は、独特のにおいのない呑みやすさを売りものにしていて、勿論私もよく呑んでいたが、特に若い女の子なんかにも喜ばれていた。それが近頃は、芋や米を原料にした本格的なものに人気が集まりだしているという。事実酒屋さんの店先をのぞいてみると、少なくとも十五、六種類の銘柄の焼酎がズラリ並んでいて、生産地も広がっている。この四、五年、鹿児島方面に仕事の関わりがあり、その土地で呑む自慢の芋焼酎は確かに美味い。においというか香りというか、何とも言えぬ味わいがあることを知った。まことに短絡的に、日本酒より下に見ていた不明がお恥ずかしい。
 最近は、日本酒もそうだが、地方の小さな蔵元の独自の味をもつ無名の銘柄が都会にも出廻り、愛飲家の愉しみをふやしているが、焼酎も又然りで、鹿児島地方などには、その土地へ行かなければ呑めない絶品のものがある。こういうのこそ地方文化というもので、大切にしていかなければならないと思う。
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 蛇足をひとつ − 焼酎というものは湯に割って呑むもの、熱い湯を湯呑みに入れて、焼酎は後から入れること。比重で自然に湯と交っていいのだそうだ。比率は、最初は焼酎六のお湯四、次から七対三ぐらいがよい、とは地元の通に聞いた話。

(S・Y)

鎌倉ケーブルテレビ広報誌
「チャンネルガイド」
平成16年3月号掲載
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