映画と共に歩む人々

7月の絵  「鎌倉で映画と共に歩む会」という会がある。文字通り、この鎌倉の街でなんらかの形で映画と係わっていきたい、という思いの五、六名の主婦の方たちが中心のグループである。皆さん、こんな風に言ったらお叱りを受けるかも知れないが、青春の思い出の中に、数々の名作映画とのふれあいが、熱く残っているような、そんなお年頃の、ごく普通の家庭の人たちである。昨年九月にこの会を発足させた。それまでにも、中央公民館や芸術館などで時々催される映画会のお手伝いをしたり、市が計画している「川喜多記念館建設等募金」への支援などやって来られたが、それとは別に、自分たちの力で道を拓いていきたいという気持ちが高まったのだと思う。代表である藤本美津子さんとお話しして、私はその思いを強く感じた。映画の仕事に係わってきた人間の一人として嬉しく、これこそまさに地域文化の発信だと思っている。

 四月に「大船を去らなかった男−川又昂撮影作品レトロスペクティブ」と銘うった上映会を二日間行った。そして五月から十一月までの間、「フレデリック・ワイズマン映画祭」を毎月一回、六作品の連続上映の形で始めた。正直言って、素人の考えた企画とは思えない。フレデリック・ワイズマンと聞いて、アメリカの著名なドキュメンタリー映画作家と知る人は、余程の映画マニアである。日曜日の午后、散歩がてらに観る映画としては、やや辛口すぎるかも知れないが、三〇人近くいたお客さんたちには、ある感動を与えた。
 鎌倉駅近くの早見芸術学院の教室を借り、ブラインド式の小さなスクリーンとむき出しの16ミリ映写機、形から言ったらこんな粗末な映画祭もめったにあるまいと思うが、そこにあるものは、映画が好き、という共通の思いをもった主催者とお客さまの一体感である。誰も観にくる人がなくって、私たちだけで観るようなことになったら、どうしようかと思ったわ、主催者のひとりが平然と言った。儲けなどある訳がない、すべて手弁当でやっている人たち、(若しかしたら、自分たちが観たいと思った映画を取り上げているのかも知れない)そんな勇気ある行動に心から拍手を贈りたい。そして大勢の市民の方たちに、こうした活動を是非知っておいて頂きたいと思っている。

(S・Y)

鎌倉ケーブルテレビ広報誌
「チャンネルガイド」
平成13年7月号掲載
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