鎌倉の散歩道 ・・・・・・ 41
鎌倉文学散歩 (12)
− 二階堂から浄明寺、衣張山へ −
鎌倉駅から段葛(だんかずら)を通って、鶴岡八幡宮の方へ行きます。この道路の中央にある一段高い道を、何気なく段葛と読んでいますが、どういう意味なのか、最近読んだ司馬遼太郎の、街道をゆく『三浦半島記』で分かりました。詳細は、本を読んでいただくとして、要点を箇条書きにすると、 ・段葛は、ふしぎな土木構造物であり、ふしぎな名称である。 ・段は壇のことである(壇とは、他より一段高くこしらえた場所)。 ・葛は”葛石”の略だという。葛石は、「社寺の建物の壇などの上端の縁にあって、縁石を兼ねる長方形の石」とある。 ・鎌倉国宝館館長の三浦氏は、「由比郷から鶴岡に神様がお渡りになるための作道(つくりみち)でした」と話す。 ・頼朝ら多数の武士達がここに住むについて、土木による環境破壊があり、この為、山林の保水力がなくなり、大雨が降るたびに土砂崩れが起った。土砂や水がこの低い大路に集まり、道は時に沼のようになったので、段葛のように高く築き上げられた道が必要だったと三浦さんはいう。 ・「神のほか、段葛を通るのは、将軍かその後の北条執権かに限られていました」とも。 |
▲ 鶴岡八幡宮 | ▲ 源氏池 |
そうこうするうちに、三の鳥居に着きました。右の池を青いセキレイが低空飛行して奥へ消えました。まだ参詣客は少ないです。 流鏑馬道を通って、横国大付属小学校を通り西御門へ。来迎寺を過ぎて、二手に分かれるところに里見クの旧宅がありました。有馬3兄弟の末弟です。大正15年に建てられたこの建物は、里見自ら設計に携わったとか。奥に萱葺きの2階屋がありますが、1階は柱だけです。手前に洋館。そこは今、「西御門サローネ」として、週1回、イベントなどの会場となっているようでした。 『多情仏心』『安城家の兄弟』 左の道を進んで、右に回った辺りに洋風の江藤淳旧宅があります。今は、外人と結婚している姪御さんが住んでいるとか。表札で分かります。 江藤淳は『小林秀雄』で新潮文芸賞、『漱石とその時代』で野間文芸賞、菊池寛賞を受けています。極楽寺に住んだ後、昭和55年から没年までここに住んでいました。最近の「天声人語」に、「妻に先立たれた夫のその後の寿命は縮まり、‥」とありました。 |
▲ 来迎寺 | ▲ 里見ク旧宅 |
頼朝墓入口の小さな公園で、落ちている銀杏を素手で拾っている老女がいました。かぶれないのでしょうか。この近くに、明治から昭和を生きた村松梢風の家があったようです。『近世名勝負物語』は、各界のライバル人物伝として注目を集めたとか。ほかに『残菊物語』『新水滸伝』『桃中軒雲右衛門』など。 梢風の孫が村松友視で、小学生の頃から祖父の家を訪れ、春夏冬の休暇はほとんど、ここで過ごしたとか。57年『時代屋の女房』で直木賞受賞。『鎌倉のおばさん』で泉鏡花賞。シティ派作家として親しまれる。『遠望するフィクションの街』に鎌倉のことが書いてあるそうです。 鎌倉宮の近くに、『日本百名山』でよく知られる深田久彌が、昭和の初期から戦後まで住んでいました。ヒマラヤ研究や山岳紀行に活躍したのは戦後だそうです。 『ヒマラヤの高峰』『鎌倉夫人』『親友』など。 大塔宮の前の道を瑞泉寺方面に行き、右折したあたりに高橋和巳が居住していました。昭和37年『悲の器』で河出書房新社「文芸賞」を受賞し、『我が心は石にあらず』『散華』『わが解体』などの作品があります。昭和44年の大学紛争で学生側に立ち京大教官を辞職し、ほどなく亡くなっています。 |
▲ 頼朝墓入口 | ▲ 鎌倉宮 |
護良親王の墓の階段前にニワトリが1羽いました。放し飼いみたいです。「ワーニャ伯父さん」の翻訳で、芸術選奨文部大臣賞を受賞した神西(じんざい)清は、このあたりに住んでいました。小説『垂水』『少年』『神西清詩集』など。戦後の鎌倉アカデミアの講師も勤めたようです。 また、『さようなら、ギャングたち』で「群像」新人賞を受賞した高橋源一郎も最近まで住んでいました。『日本文学盛衰記』で伊藤整文学賞を受賞してますが、これは朝日新聞に連載され、筆者も読んでいます。 |
▲ 護良親王の墓 | ▲ 滑川 |
鎌倉宮に出て、二階堂川に沿って下り、荏柄天神の参道を通って県道へ出ます。杉本寺の前で滑川を渡り、田楽辻子の道を経て、衣張山へ登りました。「平成巡礼道」の立札があります。 途中から、やっと人がすれ違えるほどの細い道になりました。周りは杉林。0:11′頂上に着きました。標高は120.6m。市街や大船観音、江ノ島、六国見山、などが見渡せました。「歴史的風土妙本寺衣張山特別保存地区」の標識が立ってます。妙本寺の寺域なのでしょうか。五輪の塔が2基。鎌倉逗子ハイランドの鎌倉地区の端を通ってバス停泉水橋についたのは0:50′バスの前に、タクシーが来たので乗って、午後の「味処」の取材地へ行きました。 |
▲ 衣張山頂上 | ▲ 衣張山より |
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