関東大震災の鎌倉 その8

  ―各区の被害状況―


扇ガ谷
 扇ガ谷地区の当時の戸数192戸で、うち全壊70戸、半壊73戸、全焼1戸。死亡者は17名、重傷者は19名でした。
 被害が最もひどかったのは現在の鎌倉市役所周辺域から国指定史跡亀ヶ谷坂までの道路沿いで、その他の山寄り部分は比較的軽微でした。全焼1戸は小町との境の1棟で、小町方面からの延焼によるものでした。
 八坂大神(やさかだいじん)・巽荒神(たつみこうじん)・寿福寺山門と庫裡(くり)・英勝寺山門と庫裡・海蔵寺本堂と庫裡・浄光明寺庫裡・岩船地蔵堂(いわふねじぞうどう)が全壊し、寿福寺本堂は大破。英勝寺本堂も大破しましたが、浄光明寺と薬王寺本堂は軽微でした。
 亀ヶ谷坂近くの岩船地蔵堂前では亀裂を生じて清水が噴出し、この状態は約2年後まで続いたといいます。現市役所前通りや海蔵寺前などでも亀裂を生じ、前者は幅約60cm、後者は幅24cm深さ約91cmに達する所がありました。亀ヶ谷坂の通りや海蔵寺前の通りの水路沿いは土留めが決壊し、仮粧坂や亀ヶ谷坂は崖が崩れ通行できなくなりました。浄光明寺付近の山林も崩壊して住宅を押しつぶし、小児1人がなくなっています。
 さらに、小袋坂と亀ヶ谷坂が不通となり、山ノ内方面との連絡はおもに鉄道トンネルが利用されたので、震災後、扇ガ谷地区は一時非常に混雑しました。

『鎌倉震災誌』(昭和5年 鎌倉町役場)の記載内容から

浪川幹夫


写真1 倒壊した鶴岡八幡宮楼門(鎌倉市中央図書館蔵)
写真1 英勝寺の被害状況(鎌倉市中央図書館蔵)

写真2 絵葉書「大正十二年九月一日 鎌倉大震災の惨状 八幡前二の鳥居附近」
写真2 寿福寺本堂の被害状況(鎌倉市中央図書館蔵)


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