古き鎌倉再見 その8

明治初年頃の八幡宮前の風景(2)

 今回は前回に引き続いて、鶴岡八幡宮社頭の風景を紹介します。

写真:江の島、砂浜より望む
写真1 明治初年の八幡宮前の旅籠屋(推定鈴木真一撮影)
(横浜開港資料館蔵)


 鶴岡八幡宮三ノ鳥居前の西角にあった角正旅館です。ここは現在、有料駐車場になっています。「角正」のほか「角屋正左衛門」、また「対鶴楼」ともいい、江戸時代後期には旧小袋坂登り口の左にあった丸屋や長谷の三橋などと共に、紀行文などにも見える鎌倉の代表的な旅籠屋でした。古老の話によれば、幕末の開港当時から外国人も宿泊したようで、コック付きで訪れた者もいたそうです。明治時代に鎌倉が観光地や保養地として注目されるようになると、大旅館に発展しました。

写真:腰越、江の島付近の砂浜
写真2 明治初年頃の八幡宮三ノ鳥居前(三橋雑貨商店蔵)


 前回紹介した『ザ・ファー・イースト』1870年6月13日号(旧暦明治3年5月15日)の記事にもあるように、社頭の大鳥居は石製で、立派なつくりであることが分かります。そして、画面左側で荷を降ろしているのは行商人と思われます。
 なお、この写真が撮影された時期は不明です。ところが人物は‘まげ’を結っており、画面奥の鳥居も仁王門の跡に建てられたものなので、明治3年以降に写されたと推定できます。

浪川幹夫

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