鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第5回 My 鎌倉
今回のゲスト
三留和男さん(鎌倉漁業協同組合代表理事組合長)
形がいいと評判の鎌倉の魚。そんな魚を採っていらっしゃる三留さんに、海から見た古都鎌倉のもうひとつの顔を、語っていただきました。三留さんは昭和3年生まれ。いまだ現役で活躍している漁師さんです。

「漁船のある風景」

 私の所属している鎌倉漁業協同組合は、漁港がないので砂浜に船を引き揚げていて、遊漁船もありませんから、決して派手な存在ではありません。我々は釣り漁業よりもごく沿岸に限られた網漁業に力を入れて操業しています。小型の定置網、刺し網漁が主な漁業です。これからの季節ですと定置網では8月に解禁になった伊勢海老が、9月10月まで採れます。次の年の5月いっぱいまではさざえも同じ網で多く採れます。また、しらすの船引きも盛んです。しらすというのはカタクチイワシの子を主に指しますが、カタクチイワシの場合は年に4回産卵するので条件さえよければ1年中採れているんです。他には鰺、かます、そしてソーダガツオ、たち魚、鰯類などでしょうか。  やはり私が鎌倉という土地を語るならば、海を巡る景色になると思います。沖から見た鎌倉の景色などは、山の起伏にお寺の屋根などが見えてちょっとしたものです。鎌倉文学館などは沖からよく見えます。そのすぐ左に甘縄神明様。そこで山が切れて、大仏様は沖に1キロくらいでたところあたりから木々の間から少しだけ顔を見せてくれます。もちろんそんな景色以外に、我々漁師は海で季節を感じます。トビウオやウルメイワシは夏のものですし、このへんは浅いところですから、ソーダガツオが採れ始めると秋になったな、と。ごく寒い冬には、最近ではあまりありませんが、波打ち際の湿った部分が凍ることがあります。冬が春になるとわかめが育ち、目についてきます。ホンダワラなどの海草類が水面に浮き出してくると、それが春の訪れなのです。  そんな海からの景色はお分けすることはできませんが、せめて鎌倉の魚を味わっていただける場所をお教えしましょう。小型定置網の場合、我々は3時ころ漁に出て4時過ぎ頃に浜に帰ってきます。魚を選別したり、目方を掛けたりして、6時頃には片付きます。その日のものをその日のうちに競りに出すため、それだけ早く出漁するわけです。ですから、浜にある即売所に朝の4時半ころ来ていただければ、安く新鮮な魚を手に入れることができます。特に市場の立たない日曜日なら、日ごろの1割から2割安く手に入れることができます。  私は漁師なので、旅行などでどこか別の土地に行っても、心に残るのはそんな水のある風景になります。しかも、そこに漁船のある風景が、懐かしさや感動を誘うんです。水があり、そこに漁船がいて、魚を捕って生活している人がいるということは、やはりその海なり湖なりが、生きているという感じがするからなのだと思います。農業や漁業の一次産業で生活ができるような環境というものを守っていかなくては、住環境としてもいいわけがないと思います。我々の仕事は普通から考えたら相当厳しいほうなのでしょうが、これが苦もなくこなせるようなうちは、続けていこうと思っています。
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