第70回 My 鎌倉   logo1
今月のゲスト

「ビーチコーマー」
山田 海人 さん

[2011.7.31]


山田海人さん

やまだかいとさんのプロフィール
ペンネーム 山田 海人 本名 山田 稔( 北鎌倉に在住)
昭和18年
(1943)
鎌倉で生まれる。ハリス幼稚園、御成小学校、御成中学へ通う。 幼い頃から海好きな父に連れられて海で遊び、泳ぎを習う
昭和41年
(1966)
日本大学農獣医学部水産学科卒業
昭和41年〜46年
(1966-71)
社団法人海中開発技術協会
昭和46年〜
(1971)
海洋科学技術センター(後に海洋研究開発機構)
水産系大学で海を学び海の研究所JAMSTEC(現海洋研究開発機構)に勤務。
平成19年3月
(2007)
海洋研究開発機構広報課を定年退職、
後は海洋科学ライターとして雑誌などに執筆。 小学校などで海洋教室開催、大学(筑波大、日大、文教大)で講義。ホームページやブログで海洋科学、鎌倉の豊かな自然を紹介している。


■ 私からのメッセージ


「鎌倉の海と豊かな自然に触れて子供達が大きく育って欲しい」と願っています。

読売新聞湘南版 宝の海 相模湾の記事です。

■ これまでしてきたこと


潜水 シートピア計画にアクアノート候補として訓練に参加。
1977年日本初の200m飽和潜水実験のダイバーを経験したことから、"骨の髄まで深海生物となった男"と自称。この後、300mまで数回飽和潜水にダイバーとして参加。
300m実海域実験では潜水班長を経験(200〜300mを何度も。SDC大気圧潜水)
特許・考案など 大気圧潜水装置、潜水服、魚類加圧飼育装置、深海カメラ、ダイブコンピュータ、ダイバーズウオッチ、バブルリング発生装置など
講演など ・日本大学海洋生物資源科学科特別講義「海洋科学の歴史」
・中部電力「おもしろマリンステージ」で「さかなクン」と愛知、岐阜、三重、長野、静岡6カ所で講演
・大阪サイエンスサテライト、新宿未来科学技術情報館などで「深海のお話」、テレビ出演、雑誌への投稿など
ビーチコーミング 主に鎌倉の浜辺で活動。2003年INAXギャラリーにて「鎌倉の馬の歯」や「銀化ビン」などを紹介。

■ 新しいビーチコーミング

海辺に打ち上げられた漂着物をクシで髪をすくように、やさしく探す、それがビーチコーミングBeachcombingです。 海辺の手軽な遊びであり、幾度も海辺を訪れて探す楽しみ、拾ったものを観察して調べる楽しみなど、幅広く、奥深く海を知ることができます。
ビーチコーミング ビーチコーミング


貝フィールドは海辺        
海辺へ行けば地球上の97%もの水を蓄えている大切な水との触れ合いの場です。 日本の長い海岸線( 29,751キロ、世界第六位)のどこでも気軽にできます。太陽の恵み、潮の満ち引き(月の力)、海面と大気の触れ合いなど地球環境を感じることができる素晴らしいフィールドです。

貝波が打ち上げるもの          
海辺を散策しているといろいろなモノが波に寄せられていることに気づきます。外洋に面した海辺では沖合から流れ着いたブイなど漁具をはじめ外国からゴミなど人工物が流れ着きます。 また、地先(じさき)の海域に生息する貝や魚、海藻、沖合から風に寄せられた生き物の死がいなどが打ち上げられています。

写真をクリックすると大きくなります
サザエ
アサガオガイ
トゲの長いサザエ>ギンカクラゲを食べるアサガオガイ
トゲの長いハンサムなサザエの殻は喜ばれます。 アサガオガイは浮遊性の巻貝でギンカクラゲなどを食べています。

貝有名な打ち上げもの
日本では昔から“寄せモノ”と呼んで魚やイカなど食べられるものや流木などを海辺で拾っていました。 古文書に残されているものでは、595年に拾われた正倉院の香木「蘭奢待(らんじゃたい)」は東南アジアから淡路島へ流れ着いたもので。また、琉球王朝は世界有数の「竜涎香(りゅうぜんこう)」の輸出国として知られていました。竜涎香はマッコウクジラだけが排泄する結石のようなもので1g20ドルの高い価格で取引されています。 これらは海面に浮いていて、まれに海辺に打ち上がるので海辺を散策しているビーチコーマーだけが手に入れることができる貴重なものです。

貝鎌倉の海辺で拾えるもの
鎌倉の海辺は三浦半島の付け根にあって、水深5mほどの遠浅で奥の深い湾になっています。黒潮とともに南から来た生き物や植物の種などは多く吹く南風に寄せられて鎌倉の海辺に流れ着きます。 
このほか湾奥の滑川などから流れ出た陶器のかけら、ガラスなどいろいろな人工物が浅い海底に長く堆積し、うねりで海底がかきまぜられて時折、波に寄せられてきます。鎌倉の海の特徴は昔から住んでいた人が使っていた陶器などが深い沖へ流されずに湾内に長く堆積していることです。
鎌倉の海辺で拾える陶器のかけらは宋からの青磁、朝鮮半島からの高麗青磁、鎌倉時代のかわらけ、江戸時代の燈明皿、新しいものでは崎陽軒のシュウマイ弁当の醤油入れ「ひょうちゃん」、この表情を描かれたのはフクちゃんで有名な横山隆一さんです。
また、古いガラスビンが拾えることでも有名で大雨ではビン捨て場からプカプカ浮いて川に流れ、そのまま海へ流れ着き、波に揺られて海底に沈んで行く。そしてうねりで掘り出され、波に押されて割れずに打ち上がるものがあります。 古い目薬、薬ビン、化粧品のビン、白髪染めのビン、インクビンなど旧漢字や右横書きの凹凸文字の書かれた貴重なガラスビンが時々拾えます。
生き物では動物の骨が拾えることで有名です。イルカやクジラの骨は昔、前浜の人達がさばいていた名残りのようで多く見つかります。イルカの脊椎骨は形も分かりやすいのですが耳骨は集中して探さないと見逃してしまいます。魚やサメの脊椎骨は年輪のような模様があって拾えると嬉しいものです。
鎌倉の海辺には馬や牛の骨が打ち上げられ、さらにこれらの歯がよく見つかります。鎌倉時代の遺跡からも馬や牛の頭骨なども出ているのでこれらの一部が海へ流れでたものでしょう。馬と牛の歯の違いは草をはんすうすることで知られる牛の歯は表面が凸凹していることで区別がつきます。馬の歯を拾うとどのような武将が乗っていたのかと想像するだけでも楽しくなります。
貝では由比ガ浜で作られた昭和の名曲「桜貝の歌」で有名なサクラガイが拾えます。桜の花びらのようなピンクのきれいな貝ですが最近は肉食のツメタガイの食害を受けてサクラガイが減っているようで残念に思います。
きれいな貝として人気の高いタカラガイは小型から中型の表面のきれいなものが拾えます。
電気クラゲとも呼ばれているカツオノエボシやギンカクラゲなどブルーのクラゲが打ち寄せられると近くにルリガイ、アサガオガイなど浮遊性の美しい巻貝を見つけることができます。 
材木座・由比ガ浜には何か所かの網干し場があります、網干し場の近くには売り物にならないヤドカリの入ったサザエ、ボウシュウボラ、タコノマクラなどが捨てられています。サザエはツノが長く姿の美しい殻は外人にも人気です。
ウニの仲間のタコノマクラは漂泊するときれいな置物になります。
南の海から黒潮で流されてきたヤシの実、ソテツの実などが流れついた様子をみると遠い南の島からよくぞここまでながれついたものだとロマンを感じます。
写真をクリックすると大きくなります
高麗青磁
サメの脊椎骨
ひょうちゃん
高麗青磁 サメの脊椎骨 ひょうちゃん
鎌倉時代に船で運ばれた高麗青磁のかけらや宋の青磁など貴重な陶器のかけらが拾えます。
大きなサメの脊椎骨は年輪のような模様がきれいな骨です。 崎陽軒のシュウマイ弁当の醤油入れは横山隆一さんが表情を入れたものでひょうちゃんとして人気で今も時折打ち上がります。
馬の歯
サクラガイ
クチグロキヌタ
馬の歯 サクラガイ クチグロキヌタ
鎌倉の海辺には馬や牛の歯が多く打ち上がります。鎌倉時代の 馬のサイズはかなり小型だったと分かります。 由比ガ浜は桜貝の唄が作られた場所でサクラガイを拾う観光客の方を多く見かけます。
鎌倉の海辺にはきれいなタカラガイが拾えます。クチグロキヌタは南方系のタカラガイです。


■ 海の恵みの銀化ビン

貝銀化ビン
銀化ビン 海底に30年から50年眠っているとガラスビンの内側が化学変化を起こしてガラスの中から酸化ナトリウムが溶けだしてしまう現象があります。内側が細かい凹凸状態になったものは光を微妙に屈折させてオーロラのようにきらめきます。
鎌倉の海辺にはガラスビンが時折打ち上がります。ビンを拾ってよく見ると凹凸文字で商品名や会社名が書かれていることがあります。これは昭和30年代までの古いガラスビンです。 今どきのガラスビンはリサイクルできるようにと商品名や会社名は書かれていないので何も書かれていないのは新しいガラスビンかも知れません。鎌倉の海辺で拾ったガラスビンはそれだけではありません。
これまで書いてきたように鎌倉の海辺に打ち上がったガラスビンは長い間海底の砂と泥の混ざった中で眠っていたものです。海底に30年から50年眠っているとガラスビンの内側が化学変化を起こしてガラスの中から酸化ナトリウムが溶けだしてしまう現象があります。内側が細かい凹凸状態になったものは光を微妙に屈折させてオーロラのようにきらめきます。これが「銀化ビン」と呼ばれるものです。
銀化ビンを見るとビンの口は細いものが多いことです。ビンの口が大きいと海底で眠っていたとしても新しい海水がビンの中に入ってくることがあります。ビンの口が細いと新しい海水が入ってこずにビンの中の海水が泥の分解で酸素が少なくなる(貧酸素状態)ことが大切なようです。


■ 活動内容


海のこと
海の研究所で長く勤務させていただいたことへの感謝の気持ちから、次のホームページを開設しています。
山田海人のビューポート(覗き窓)
バブルリングのやさしい作り方
深深たる海底に向かいて

海辺で手軽にできるビーチコーミングの他に海の魅力をお伝えしたいと深海のことなど幅広く紹介しています。特にこれまで人を寄せ付けなかった深海への挑戦はロマンがあるので詳しく載せています。
バブルリング 私がアートとして完成させた「バブルリングの写真」
バブルリングとは水中へ潜り、水面に向かって息を吐くと唇の使い方で、ドーナッツ状の水泡を生ずることができます。
約40年前に世界で初めて私がやったものです。

■ 海人の鎌倉レポート(ビーチコーミング)

貝鎌倉が大好き
私が生まれ育った鎌倉の全てが大好きです。鎌倉には著名な日本画家のアトリエが幾つもありました。これら美を追求する偉人達はアトリエからみえる素晴らしい鎌倉の自然を眺めて、創作意欲を高めてきたと思います。鎌倉の素晴らしい自然は鎌倉に住む人の大切な財産だと思っています。
山ノ内の我が家のまわりや近所の野山、川や池を散策して目に見える自然をカメラに収めてブログ「鎌倉いきもの会議」で紹介しています。
説明 説明 花

海人の鎌倉レポート
(ビーチコーミング)

■ 鎌倉いきもの会議


また、鎌倉いきもの会議の活動として「市の花 リンドウ」を増やす活動を家内と一緒に行っています。3年目を迎えて小学校2校、お寺、神社、中央公園や個人のお宅に鎌倉自生のリンドウを、種からとった苗を植えていただいています。
りんどう りんどう

鎌倉いきもの会議

■ リンク集
海洋開発機構(JAMSTEC)


Copyright(C) 2011 Kamakura Citizens Net / Kamakura Green Net  All rights reserved.