第55回 My 鎌倉 | |
今月のゲスト |
森 研四郎さん日本基督教団 鎌倉教会牧師ハリス記念 鎌倉幼稚園園長 [07.10.12 ハリス記念鎌倉幼稚園で] |
もり・けんしろう さんのプロフィール |
日本基督教団鎌倉教会牧師、同教会付属ハリス記念鎌倉幼稚園園長 1949年 徳島県生まれ。 1979年 東京神学大学大学院修了後、日本基督教団滝野川教会(東京都)伝道師、川上教会(愛媛県)牧師を経て、1993年 鎌倉教会に招聘され現職。 |
■ 鎌倉教会の歴史 鎌倉教会とハリス記念鎌倉幼稚園の歴史を簡単に振り返りましょうか? 鎌倉教会は明治29年(1896年)美山貫一牧師が銀座教会牧師を全うし、美以教会日本年会より、鎌倉・藤沢担当を任命され、鎌倉市長谷に移り住んだ時から始まります。 この明治29年の暮れ、美山貫一牧師宅で除夜祈祷会が開催されました。 翌明治30年(1897年)の元旦礼拝で、参加者たちはこの年をもって鎌倉伝道開始の年にすべく堅く誓い合ったと記録されています。 明治37年(1904年)にかけて歴代牧師の努力による土地取得と牧師館の新築などで布教の基礎が出来あがりました。 ハリス記念鎌倉幼稚園は明治42年(1909年)の設立です。 鎌倉教会創立者・美山貫一牧師夫妻と、当時の教会夫人たちの祈りと願いによって設立されました。 それに先立つ数年前、アメリカ・メソジスト教会の宣教師 M.C.ハリスとその夫人フローラ・ベスト・ハリスのうながしと特別な献金が幼稚園設立の契機となり、ハリス記念『鎌倉幼稚園』と命名されました。 初代園主は美山貫一牧師夫人の美山豊子です。 ■ ハリス記念鎌倉幼稚園の教育方針 ここに明治45年(1912年)に行われた「ハリス夫人記念鎌倉幼稚園増築寄付金募集書」が残っています。 『神がお與へなされた鎌倉といふ浄らかな里、私どもの先祖は、そこを史と詩とで彩りました。私どもも何かなして、この天然に背かぬやうにしたいので御座います。(中略)今では人口一萬にもなろうかといふ鎌倉、この美しい土地に、子どもらしくない子どもを置いては済みませぬ。(後略)』 私は、この「鎌倉に、子どもらしくない子どもを置いては済みませぬ。」という箇所がとても好きで、今でも、当園の教育方針として脈々と受け継がれていると思うのです。 ■ 関東大震災からの復興 その後、大正12年(1923年)の関東大震災では、教会も幼稚園も大きな被害を受け、礼拝堂・幼稚園・牧師館が倒壊しましたが、火災は免れました。 教会に避難した多くの人の中には大工職の方もおり、空き地に小屋を設け、4日目に聖日礼拝を守り、翌日から復興工事にかかってくれました。 2ヶ月で平屋建ての礼拝堂と牧師館の2棟が完成しました。現在の礼拝堂は大正15年(1926年)に完成しました。 幼稚園は大正13年(1924年)に復興定礎式を行い翌14年(1925年)に完成しました。 ■ 遊ぶことの大切さ 幼児教育では遊ぶことが特に大切です。 外で遊ぶことで、人と人との接し方を学び、探求心が湧き、仲間意識が育てられます。 一人遊び、二人遊び、仲間遊び、と次第に友達関係が発達します。 当園では、保育後も暗くなるまで園庭を開放しています。 おうちの方が迎えに来て、歓談をしている間、子どもたちは木登りをしたり、遊具で遊んだりして、いろいろなコミュニティーができあがります。 もちろん親子が一緒に遊ぶこともあります。 ある人の言葉に、「私の魂の故郷は幼稚園の砂場」というのがあります。 この言葉が大好きで、子どもたちを見ていると、みな、遊ぶことで成長していくような気がします。子どもは遊びで育ちます。 毎年10月はじめにはこの園庭で運動会を行います。 今年(2007年)も10月5日に運動会を行いました。 教会の先人が確保して下さった1100坪の敷地をいろいろ有効に使っています。 園舎の裏側では畑を作っています。 今年はトマト、オクラ、さつまいも等を植えました。 園児たちが苗を植え、育て、収穫するまでの過程は興味に満ち、幼児教育につながります。 ■ 大正14年の建物は現役です 先ほどお話しした、大震災から復興して建てられた園舎を見ていただきましょう。 この建物は、現礼拝堂同様に鎌倉市の景観重要建築物の指定を受けていますが、現役として園のいろいろな行事に使われています。 入園式や保育証書授与式、敬老招待会などの行事はもちろん、雨の日は遊戯室として開放します。 ■ 礼拝堂の内部 鎌倉教会の内部は古いままのものが残っています。 礼拝堂の椅子の最前部と最後部に座っていただくと座り心地の違いがお判りいただけると思いますが、最前列では椅子の高さが低く、最後列では高くなっています。 後ろに行くに従って高さを変えた、昔の大工さんの工夫を知ることが出来ます。 ステンドグラスは西日が当たるととてもきれいです。 礼拝堂の最後部のパイプオルガンは2代目で、さほど大きくはありませんが、とても良い音色です。 このオルガンは山梨県の草苅オルガン工房(草苅徹夫)製のオルガンです。 ■ ハリスデー 昔からハリスのバザーといって、ハリス幼稚園主催のバザーは有名だったようですが、現在はハリスデーと名前を変えて、毎年6月の第1土曜日に開催しています。 バザーももちろんありますが、みんなで遊び、楽しく一日を過ごすという趣旨で、卒園児も近隣の人も自由に参加していただいています。 お父さん方の焼きそばや金魚すくい、手芸手作りコーナー、絵本の読み聞かせなど一日楽しんでいただきます。 ■ 園外保育 ハリス幼稚園では、天城一泊旅行(年長組)・いもほり・親子遠足など折に触れて園外保育を行っています。 園外保育には保護者が参加するものもあります。 ■ 最古参幼稚園としての自覚と責任 ハリス幼稚園には現在120名の園児が在籍しています。 3歳児はこばとぐみとひよこぐみ、4歳児はひつじぐみ、年長児はばらぐみとゆりぐみというクラス編成です。 一方、鎌倉には23の私立幼稚園があり、そのうち22園で鎌倉私立幼稚園協会を結成しています。 ご存じのようにハリス幼稚園はキリスト教ですが、寺院や神社の経営する幼稚園、個人経営の幼稚園などバラエティに富んでいます。 当園は、2009年に開園100周年記念を迎えます。 この100年近い間に、当園を卒園された方の中には、さまざまな分野で活躍されている方が沢山いらっしゃいます。 永年幼児教育を続けてきた当園は、幼児教育を深め、推進する責任があると考えています。 このような自覚をもって幼児教育を引っ張り、次の世代に続けていきたいと思います。 |