四   脚   門



     惣門は形式が四脚門ですのでここで紹介いたします。

惣門には後土御門天皇 (1442-1500) の筆をもとにした額「瑞鹿山」を掲げます。
建て直しによる変遷がありましたが、"細部の木鼻や海老虹梁の形状は江戸後期の性質を示し、
万延元年 (1860) の修復時のものと思われる。" (『目録』) とありますが、
一部には良質の古い材が使用されているようです。
規模や海老虹梁を用いる形式は室町末期からのようです。(『目録』)


下の写真にマウスポインターを載せると惣門 (四脚門) の
細部をご覧になれます。


境内の四脚門について

     円覚寺の四脚門は、惣門をはじめ、塔頭が(龍隠庵を含め)18院ありますので、それらの山門が含まれますが、ここで対象になる古いものは下記の8件です。

No. 形 式 所 属 文化財指定 建立年代
1 四脚門 棟柱・海老虹梁式 円覚寺惣門 - 幕末改修
2 四脚門 棟柱・海老虹梁式 帰源院山門 - 十七世紀前期
3 四脚門 棟柱・海老虹梁式 松嶺院山門 - 十八世紀初期
4 四脚門 棟柱・海老虹梁式 続灯庵山門 - 文化二年(1805)
5 四脚門 棟柱・繋貫式 雲頂庵山門 - 十七世紀末
6 四脚門 棟柱・繋貫式 仏日庵山門 - 十七世紀末
7 四脚門 虹梁蟇股式 如意庵山門 - 十九世紀中期
8 四脚門 虹梁蟇股式 済蔭庵山門 - 十九世紀中期


山門の形式別による紹介

■ 棟柱・海老虹梁式

     この形式に属するのは、惣門、帰源院・松嶺院・続灯院の各山門です。

     この形式は、中心となる2本の本柱が棟(近く)まで到達しているものです。 本(又は、棟)柱の上部と控柱の上とを海老虹梁と呼ばれる湾曲の大きな梁でつないでいるのが特徴です。

     その下には、前後の控柱の頭の部分にあって、本柱を貫いてつなぐ材が通ります。これは柱と柱を横に貫くので貫(ぬき)と呼ばれますが、ここでは頭の部分でつなぐので頭貫(かしらぬき)と呼ばれます。

     海老虹梁は鎌倉時代の禅宗様建築に始まったといわれていますが、鎌倉では妙法寺(大町)の山門が一番古いものとのことです。






■ 棟柱・繋貫式

     この形式に属するのは、雲頂庵・仏日庵 (最近の立替で形式が変化) の山門です。

     この形式は、中心となる2本の本柱が棟(近く)まで到達している点は上記と同じです。
違いは、本柱と控柱の上とをでつないでいることです。

     その下には、海老虹梁形式と同様、前後の控柱の上部を本柱を貫いてつなぐ頭貫があります。

前記のものと同様に禅宗様であるとのことです。

鎌倉で古いものは17世紀中期ころの寿福寺(扇ケ谷)の惣門や、大慶寺 (寺分) 山門で、前記と並ぶ古い形式とのことです。


■ 虹梁蟇股式

     この形式に属するのは、如意庵・済蔭庵の山門です。

     和様の代表的な形式といわれます。

     中心である本柱と脇の控柱がほぼ同じ高さです。2本の本柱の上に前後の控柱の方向に、虹梁を配し、 虹梁の上に、蛙の股に似ていることから呼ばれるようになったといわれる蟇股(かえるまた:加重を支え、また装飾目的の部材)が乗ります。

     ここに使われる蟇股は、中がくりぬかれていないので板蟇股と呼ばれます。