生年月日

 同年同月同日生まれの人と、ある宴席で知り合った。三十年以上も前のことである。
 横須賀線の終電車、新橋駅十一時五十何分かのグリーン車に乗り合わす鎌倉、逗子の人達の、当然のことながらその時間ともなればそれぞれ皆さんご機嫌で、わいわいがやがや話が弾むうちに、いつの間にか草野球のチームが出来た。名付けて終電ヤンガーズ。殆ど四十歳以上の中、老年ばかりだから、せめてチーム名ぐらいは若々しくという、涙ぐましき想いが感じられる。野球もさることながら、後の宴会がもっと楽しみで、勝っても負けても、最高に盛り上がる。ある日そんな席で、初対面のS氏と盃を交わすうち、
7月の絵 「あなた何年生まれ?」
「わたし? 十四年、大正―」
「何月?」「六月?」
「何日?」「十三日?」
「ホント? 同じだ、私と!」
 偶然と言えば、それまでだが、わずか十数人の同志の如きグループの中だけに、お互い顔を見合わせて、しばし言葉もなかった。肚の中では、オレの方が若いなと思ったりしながら…。
 その後、草野球の方は消滅したが、S氏とはたまに電車で顔を合わせ、駅前の飲み屋で、ちょっと三十分だけ、といっては一時間以上過ごしたりする。つまり、誕生日が同じという偶然が、得難い縁(えにし)として人の心と心を結びつけるのであろうか。
 人生って、不思議なものですね、確かそんなシャンソンの歌詞があったように思うが…。

鎌倉ケーブルテレビ広報誌
「チャンネル鎌倉」
平成7年7月号掲載
▲TOP

Copyright (c) Kamakura Citizens Net / Kamakura Green Net 2001 All rights reserved.