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編集部員のリレー随筆(27)

全国 変わり種共同浴場

制作:ひろさん

全国の共同浴場巡りを始めて7年になります。7年間でおよそ400軒の共同浴場に入りました。
その中には珍しい共同浴場があるので紹介します。
ここでいう共同浴場とは、お湯が温泉で、誰でも希望すれば入ることの出来る浴場を呼びます。
共同浴場の中には、組合員だけが入ることが出来て、一般の人が入ることの出来ない浴場(いわゆる「ジモ専」)も結構数が多いのです。



○ エッ? 道の駅に共同浴場? (浅虫温泉・はだか湯)

道の駅ゆーさ浅虫 はJR東北本線の浅虫駅前(青森県)にあります。

はだか湯
(はだか湯)

鉄筋コンクリート造の建物は5階建てで偉容を誇っています。

この建物の5階に「はだか湯」という共同浴場があります。
見晴らしが良く、陸奥湾が一望できます。

入浴料金は大人350円で、浅虫温泉の他の共同浴場の価格と同じです。

泉質はカルシウム・ナトリウム−硫酸塩・塩化物泉(低張性中性高温泉)ですが、残念ながら循環使用で、若干のカルキ臭がします。


道の駅ゆーさ浅虫
 
1Fの土産物売り場
(道の駅ゆーさ浅虫)
(1Fの土産物売り場)

はだか湯はいつも混んでおり、浴槽の写真を撮るとき入浴している人に了解を取るのにかなり時間が掛かりました。

道の駅に共同浴場がある例は全国にいくつかあります。筆者の経験では栃木県湯西川温泉の道の駅「湯の郷 湯西川観光センター」の二階に「温泉浴場」が併設されています。
また似たような事例として、中央自動車道の諏訪湖SSにハイウエイ温泉があります。




○ エッ? 博物館に共同浴場? (秋の宮温泉郷・秋乃宮博物館)

秋の宮温泉郷は秋田県湯沢市の山間に湧く名湯で、宮城県の県境にも近く、人気の高い温泉郷です。


秋乃宮博物館入り口
 
博物館の展示物1
(秋乃宮博物館入り口)
(博物館の展示物1)

この温泉郷に「秋乃宮博物館」という博物館があります。
大正時代と昭和初期〜昭和中期のありとあらゆるがらくたを集めた博物館で、展示物を眺めていると飽きることが無く、思わず長時間過ごしてしまいます。


博物館の展示物2
 
油谷コレクションの由来
(博物館の展示物2)
(油谷コレクションの由来)


実はこの博物館のもう一つの名物は博物館入場者に浴場を公開していることです。
秋乃宮博物館は、博物館用の建物でなく、廃業した温泉旅館の建物を利用しているため、入場者は希望すれば浴室の鍵を貸してもらうことが出来ます。

一回一組だけの入浴者ですから、入浴中は他の人にわずらわされることなく、名湯を満喫できます。
泉質は公開されていませんがナトリウム-塩化物泉と推定されます。


秋乃宮博物館浴場
(秋乃宮博物館浴場)

秋乃宮博物館の浴場は、旅館の裏手にあります。
長い階段を下りると入り口があり、鍵を開けて入ると脱衣場です。
その右手が浴室で浴室に入ると役内川の川原の石を削って造られた浴槽が2つあります。
こんな素朴な浴槽は滅多に見られる物ではありません。
源泉の流れも、同じように川原の石を削った溝に沿って流れてきて、熱い場合は溝を石でせき止めてバイパスで排湯し、ぬるくなったら石を調節して源泉の流入量を増やすという方式です。

博物館の入場料が500円で、入浴料金は無料です。




○ エッ? ガソリンスタンドに共同浴場?
    (鳴子温泉・ガソリンスタンドの湯(通称))

この温泉は正式には共同浴場ではありません。
ただ、ガソリンスタンドのオーナーの好意で、事前にお願いしておくと入ることが出来ます。
いわば個人のお宅のお風呂に入れてもらうという形です。
勿論無料です。

場所は宮城県の鳴子温泉で、国道47号線に面したENEOSのガソリンスタンドです。


ENEOSのガソリンスタンド
(ENEOSのガソリンスタンド)

この温泉に入れてもらう手順はおよそ次の通りでしょうか?
  1. 電話を掛けてその日に入れてもらえるかどうかを聞く
  2. およその到着時間を伝える
  3. 着いたらガソリンを入れる(必須ではない)

通称 ガソリンスタンドの湯
 
ご満悦のひろさん
(通称 ガソリンスタンドの湯)
(ご満悦のひろさん)

温泉はガソリンスタンドの裏手にあり、二面はブロック塀にかこまれ、あと二面はよしず張りになっています。

先方は、入浴希望者が到着したら、ポンプを稼働しガソリンスタンド裏手の空き地の地下百数十メートルから源泉を汲み上げてくれます。
家庭用のステンレスの浴槽にお湯が一杯のになるのに4〜5分かかります。

よしず張りの中ではだかになり、浴槽に入ると、強い金気臭がして、温泉気分が満喫出来るという仕掛けです。
お湯は36〜7度ですから、冬に入れてもらうのはきついかも知れませんが、夏の時期にはぬるめの掛け流し温泉はマニアにとって垂涎の的です。

この温泉は、「高橋智子の湯」として温泉法に基づき登録されており、当初、スタンドのタイヤなどの洗浄用として掘削されたともいわれています。


ガソリンスタンドで温泉に入ることが出来る事例は他の県のガソリンスタンドでもあるようです。




とりあえず、変わり種共同浴場を3カ所ほど紹介しましたが、まだまだ全国にはいろいろと毛色の変わった共同浴場がありますので、機会があったらまた紹介したいと思います。


制作:ひろさん



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