関東大震災の鎌倉 その21

―公共施設等の被害―

4 教育機関の被害と応急処置 町立鎌倉小学校

 大地震によって本町の各学校は大きな被害を受けました。町立鎌倉小学校(現市立第一小中学校)を始め、神奈川県立師範学校(現横浜国立大学)及び附属小学校、鎌倉高等女学校(現鎌倉女学院中高等学校)等の校舎はすべて倒壊しました。
 9月1日、鎌倉小学校は授業始めで児童は午前10時頃に全員帰宅し、師範学校附属小学校と鎌倉高等女学校は夏休み中であったため、学校での児童・生徒の被害はありませんでした。
 鎌倉小学校の校地は砂地で水田を埋め立てた場所もあって、校舎・御真影奉安所・図書館書庫等が第1震と同時に倒壊しました。講堂は風に対する補強がなされていたためか、第1震では倒壊を免れましたが、第2震によって全壊しました。石造の正門と通用門は倒壊、教員住宅は瓦ぶきの2棟が全壊し、亜鉛ぶきの3棟が被害を受け、校舎に付属する便所は倒壊を免れました。また、校庭は所々で亀裂を生じ、水が噴出した所もありました。この時、当直の教員1名と技能員4名のほか裁縫教室で用談中の3名が校舎の下敷となりましたが、屋根を破って脱出し、かけつけた教員によって助け出されました。
 翌2日は校庭に被災者が押し寄せて小屋を建て始め、焼け出された鎌倉郵便局も校庭に避難して、仮設事務所の急造に取りかかるというありさまでした。
 学校では夏休み中に日本赤十字社神奈川県支部が設置した、病弱児童の夏期保養施設の風呂場を仮事務所に充て、毎日2、3人が交代で執務することになりました。そして、非番の男性教員は町役場と共に被災者の救護にあたりました。このあと6日には被災者の仮設住宅が建ち始めたので、教員は被災児童の家庭を訪問し死傷者の調査を実施しました。

区 分
尋 常 科
高等科
  1年 2年 3年 4年 5年 6年 1年 2年  
死亡児童数
1 4 7 6 4 5 1 0 28
負傷児童数
11 2 1 3 1 4 0 2 24


  9月20日を過ぎると状況がやや安定したので、教育活動を再開するため24日に準備を整え、25日から下記5ヶ所で林間授業を開始しました。

 ・尋常科1・2年 海岸通り芳川(よしかわ)伯爵別邸内の松林
 ・同   3年   一ノ鳥居島津公爵別邸庭園
 ・同   4年   海岸通り山本男爵別邸内の松林
 ・同   5・6年 大町妙本寺本堂及び境内
 ・高等科1・2年 鶴岡八幡宮境内

 授業時数は、一週間で尋常1年は13時間、同2・3年は17時間、同4年は18時間、同5・6年は19時間、高等1・2年は20時間とし、雨天は休み、すべて午前中で帰宅させました。
 11月20日には林間授業を撤廃。工兵第11大隊によって校庭に急造された仮設の被災者収容所を校舎に転用し、ここに移って二部教授を行うことになりました。


『鎌倉震災誌』(昭和5年 鎌倉町役場)の記載内容から

浪川幹夫


町立鎌倉小学校
写真1 町立鎌倉小学校の被害(鎌倉市中央図書館蔵)

町立鎌倉小学校

写真2 町立鎌倉小学校の被害(鎌倉市中央図書館蔵)


町立鎌倉小学校(講堂)
写真3 町立鎌倉小学校の被害〔講堂〕(鎌倉市中央図書館蔵)

林間授業風景
写真4 林間授業風景(鎌倉市中央図書館蔵)

仮説の鎌倉小学校
写真5 仮設の鎌倉小学校(鎌倉市中央図書館蔵)
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