関東大震災の鎌倉 その14

  ―各区の被害状況―


坂ノ下
 戸数361戸。うち全壊161戸、半壊118戸、流失53戸、埋没6戸で、死亡者52名、重傷者は約100名です。
〜津波などの被害〜
 津波は堤防を破壊して東方は長谷境まで及び、密集した人家が壊されました。建物の残骸は県道北側の住宅地に押し寄せ一部はここに残りましたが、大半は引く波によって流失しました。県道北側の人家は流失を免れましたが、これは海岸寄りの密集した建物によって波の威力がいくぶん遮断されたためかも知れません。さらに、津波が去った後の海浜ではところどころで亀裂を生じ、数日間水が噴出したことが確認されています。
 ある人は1回目の津波にさらわれ、2回目の津波で稲瀬川の河口付近に打あげられて救助されたといいます。また、漁船の被害も大きく、船46艘、漁具などが失われました。
 そして、極楽寺坂寄りの区域は地盤が高く津波の被害はありませんでしたが、ほとんど倒壊し、わずかに電車の線路以北の区域が半壊程度であったにすぎませんでした。
〜その他の被害〜
 極楽寺坂は北側の崖から虚空蔵堂(こうくうぞうどう)の山にかけて崩壊し、道路は深さ約3〜6m埋没して通行が遮断されました。坂の東口の住宅では小児1人が圧死しています。
 霊山(りょうぜん)から稲村ガ崎突端に至る山崖が崩れて下の海を埋めたため、ここでは岬の角まで歩けるようになりました。このほか、御霊神社前では、江ノ電トンネルの上部が崩壊して軌道が埋まりましたが被害は比較的軽微でした。
『鎌倉震災誌』(昭和5年 鎌倉町役場)の記載内容から

浪川幹夫



写真1 霊山ヶ崎の崩落状況(鎌倉市中央図書館蔵)
写真1 霊山ヶ崎の崩落状況(鎌倉市中央図書館蔵)

写真2 坂ノ下の津波被害の状況(鎌倉市中央図書館蔵)
写真2 坂ノ下の津波被害の状況(鎌倉市中央図書館蔵)

写真3 坂ノ下と新宿の津波被害の状況(鎌倉市中央図書館蔵)
写真3 坂ノ下と新宿の津波被害の状況(鎌倉市中央図書館蔵)

写真4 坂ノ下通りの被害状況(鎌倉市中央図書館蔵)
写真4 坂ノ下通りの被害状況(鎌倉市中央図書館蔵)


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