関東大震災の鎌倉 その5

  ―各区の被害状況―

 今回から、旧鎌倉町の各区の被害状況について紹介します。

十二所
 戸数40戸のうち、全潰3戸、埋没1戸、半潰11戸で、死亡者は2名です。
 人家はほとんどが「かやぶき」で、倒壊しても人的被害は軽微であったようです。十二所居住者の内1名は小町の駿河銀行支店で焼死し、もう1名は小町336番地で圧死したため、十二所区内にいて死亡した人はいませんでした。しかし、泉水橋付近の住宅は激震と共に裏山が崩壊し、10畳敷もあろうかと思われる岩石が落下してその下の家屋を破壊しています。
 十二所神社では石鳥居や石灯籠等が壊れましたが社殿は無事でした。明王院はほとんど被害がなく、光触寺では書院が全壊し庫裡は破損、本堂はかろうじて倒壊を免れました。同寺の本尊で重要文化財の木造阿弥陀如来及び両脇侍立像(りょうわきじりゅうぞう)は、余震があるなか堂外に移されたため無事でした。
 朝夷奈切通は山の崖が崩れて交通が途絶え、泉水橋際では亀裂を生じて橋が墜落。明石橋以東の川岸約54mが崩れて橋も墜落しました。同じく明王院橋と森戸橋も落ちましたが、光触寺橋や御坊橋・泉橋は危く破壊を免れました。

浄明寺
 戸数40戸、うち全潰10戸、半潰15戸。死亡者は5名です。
 死者の内、報国寺奥の岩窟内で石工職2名が崩壊によって圧死しました。
 熊野神社は被害軽微。浄妙寺は庫裡が全壊、客殿荒神堂は半壊しましたが本堂は無事でした。報国寺の本堂は裏山が崩壊し9m四方もあろうかと思われる岩石数個が落下したため圧しつぶされ、庫裡も半壊しました。
 県道沿いの浄明寺橋は破壊され、宅間橋西側の土留石垣が決壊。宅間橋(たくまばし)・犬懸橋(いぬかけばし)は墜落しました。
絹張山(きぬばりやま)では崩壊した土砂や岩石が山腹の杉林約99.2アールを埋め、杉の大木数千本を失いました。その他山林の崩壊は十数ヶ所あって約400アールに及び、土石が落下して耕作不能になった田畑も少なくありませんでした。 〔『鎌倉震災誌』(昭和5年 鎌倉町役場)の記載内容から〕

浪川幹夫


写真タイトルに「報国寺」とある。本堂か(鎌倉市中央図書館蔵)
写真タイトルに「報国寺」とある。本堂か(鎌倉市中央図書館蔵)

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