第38回 My 鎌倉  
今月のゲスト


西松 凌波さん


画業を続けて45年
絵筆の先に自分を凝縮させる!!

文人画家・西松凌波(内海久子)さん


[03.08.25/04.12.13 扇ガ谷のご自宅にて]

西松凌波さん
にしまつ・りょうはさんのプロフィール
1941年鎌倉生まれ。63才。
日本画家西松秋畝の次女。油彩画、ドライフレスコ画を経て、1989年から雅号を西松凌波と改め、文人画に傾倒。個展を中心に国内外で活躍。日本美術家連盟会員。 凌波会主宰



■画家の血


わたくしの父は、岐阜県出身の日本画家で、美大(現東京芸術大学)卒業後、神奈川県師範学校(現横浜国立大学)に赴任しました。ですから、わたくしも鎌倉に生まれ、御成小、御成中、湘南高校と、ずっと鎌倉を離れずに居ます。

父が日本画家だったせいか、絵の世界に入るのは自然の流れでした。ただ、父に対する反発もあったのでしょうね。日本画ではなく油絵やデザインを横浜国立大学の美術科で始めました。
そのころ、父が亡くなり、西洋美術よりも日本美術史や日本画に深く興味を持つようになり、「日本画の余白について」という卒論をまとめました。

勤め先には色々と話がありましたが、父の師範学校の関係で、横浜の私立精華小学校に決まり、美術の教師になりました。絵を描くだけでなく、美術全般の造形教育をしていました。

15年ほど美術の教師をして、そのころ出来た横浜国立大学の大学院に入り、文人画の研究をするようになりました。

■画業に生きる


大学院終了後は大学などの非常勤講師を6校ほど受け持ち、忙しくしていましたが、ずっと絵は描き続けていました。
当時は、油彩画の他に、ドライフレスコ画にも手を染めていました。

墨彩画 「芳香」
墨彩画 「芳香」
  ただ、油彩など西洋の絵画は、絵の具を重ねて作品を完成させてゆくのに対し、墨彩画という日本画の筆と紙または布とが触れあった1回だけの勝負で自己を表現するという世界に惹かれるようになりました。父の影響もあったのでしょうね。

40才の後半、画業に専念するため、一切の教職から身を引くことにしました。

基礎的研究が10年、応用的研究が10年、そしてもう10年と、30年で完成するとなると、わたくしの場合、油彩やドライフレスコでおよそ30年、墨彩画ひいては文人画でも、30年で到達するためには、早くその道を歩み始める必要があったのです。

■文人画の道


中国に「詩・書・画三絶」という言葉があります。詩を作り、書を書き、絵を描くということのどれもが絶品という意味で、この三つが一体となってその人となりが現れるというのです。昔の中国の文人たちはこの三絶をめざしていましたが、わたくしも現代の文人画家としてこの三絶を目指しています。
印章も入れて四絶ということも考えています。(笑い)

科学の世界は説明、芸術は哲学です。わたくしは三絶を極めるために老子・荘子の世界をもっと深く勉強したいと思っています。

■個展での出会いから


個展は44回を数えます。個展ではいろいろな出会いがあります。

例えば、5年半ほど連載していた朝日新聞の鎌倉版タウン誌「鎌倉朝日」「古都点描」の挿絵は、藤沢のさいか屋の個展に執筆者がお見えになり、わたくしの絵をご覧になってすぐはじめて欲しいと云うことではじまりました。そして本になりました。

どの場所の、どの個展でもそういった思い出が沢山詰まっています。

古都点描 「常楽寺」
古都点描「常楽寺」
古都点描 「大船観音」
古都点描「大船観音」

■綿密な取材


取材には念を入れます。
例えば、先ほどお話しした「古都点描」の墨彩画も原稿を頂いてから何度も取材して、文章の雰囲気に合った絵が出来上がるまで想を練ります。
正確さを期するためスケッチしたり、カメラを利用することもありますが、単なる写生でなく、原稿と自分のイメージにあった絵を画室で創り上げるのです。

わたくしの画室は二階にあります。
山馬などの筆や墨・硯など、また、紙や絵絹にもいろいろ凝る方です。そして、硯・水差しや硯屏(けんびょう)、筆置きなど小物も色々な見立てで、わたくしにとって最もふさわしいと思えるものを使っています。
例えば、彩墨の黄色い墨を使って色紙にちょっと描いてみましょう。
 
色紙を書く凌波さん
色紙に描く凌波さん

愛用の筆
愛用の筆
彩墨と専用の硯(紅糸硯:こうしけん)
彩墨と専用の硯

■いろいろな仕事


自分の絵の制作の他に、いろいろな仕事を依頼されています。

雑誌の挿絵や、郵便局からの絵ハガキ制作、タウン誌の表紙などいろいろありますが、その他にも、横浜の東横線と相鉄線の間の通路の「ステップギャラリー」に絵を掲げて、通路を楽しく演出する仕事をお引き受けしたことがあります。

絵葉書 (1)
絵葉書 (1)
絵葉書 (2)
絵葉書 (2)
絵葉書 (3)
絵葉書 (3)

また、相鉄線の三ツ境駅の「三ツ境相鉄ライフ」に出店している茶舗「横浜園」や、横浜の地下鉄のセンター北駅の「阪急」4階の「茶・チャチャ」 から依頼を受けて、墨彩画の壁画をお引き受けしたり、いろいろの仕事にチャレンジしています。

帯や着物に文字や絵を描いて楽しんだり、古い布で表装したり、昆虫採集の透明なアクリルの箱に自分の絵を収めて額縁に仕立てたりもしています。音楽に誘われて即興的に描くことも大好きです。

袴に描いて欲しいという方からの依頼で描いて見ました。
袴の前 袴の後
■鎌倉とわたくし


今まで、ずっと鎌倉に住んでいました。海からの風と三方の山々の変化にいつも興味をもっています。
ただ、一度鎌倉を出て、もう一度鎌倉に戻ると、自分が更に大きくなって居るような気がするのですが、なかなか果たせません。
浄明寺に一軒家を借りて、アトリエに仕立て、大きな仕事に1年半取り組みました。(今はそれが終わり、仕事場は手ばなしました。)
こういうこともあって、鎌倉から一度離れることがなかなか出来ないでいますが・・・・・・。

■近況のご報告(2006年12月)


年 月 活 動 内 容 その時の作品などご紹介
2004年
8月
7〜9日
鶴岡八幡宮境内雪洞祭りに2点出品

題「秋海棠」(写真左)
題「月桃の花」(写真右)
2004年
9月
11日〜20日
新宿京王プラザホテルロビーギャラリーにて
ありがままに西松凌波−尾花の世界−
個展44回目を開催

ご案内のメールにもちいた「ふじのみねに尾花揺る」(右写真)
2004年
9月
共著「鎌倉・古都点描」(表紙)
文=中村藤一郎
画=西松凌波
冬花社 1,890円税込み
2004年
9月
著書「暮らしをいろどる墨彩画」(表紙)
−西松凌波の華世界−
日貿出版社 2,730円税込み
2004年
11月
12日
鎌倉ケーブルテレビの番組7days(セブン デイズ) 「鎌倉・古都点描」に出演しました。

右は、文を書かれた中村藤一郎さんと 対談中の1コマです



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