鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第9回 My 鎌倉
今回のゲスト
田村一雄さん(ウクレレアーティスト)
 田村さんは、斬新なデザインと漆で仕上げた画期的なウクレレの製作を手掛けるOFFICETのオーナーとして、また自らもウクレレアーティストとして、ワーナーレコードからCD「MAHALO」をリリースするなどの活躍をなさっている方です。また、田村さんの主催するウクレレスクールには女性の方や若いサーファーなどが集まり、賑やかで忙しい毎日を送っておられます。そんな田村さんに、お気に入りのスポットや、鎌倉に関して思うところなどをお伺いしました。

「七里ヶ浜と鎌倉」

 私は仕事上、たびたびハワイに行きます。ハワイの魅力は何といっても自然の素晴らしさです。  ホノルル空港に着くとまず、抜けるような空の青さと何色にも分かれているきれいな海、さわやかな風、さっぱりした暖かさと、ハワイ独特の香りを肌で感じます。わずか6〜7時間のフライトであるにもかかわらず、日本とは全く違う環境が私にはうらやましく思えます。将来はハワイに住みたいと思いまして、着々と準備をしております。  私は七里ヶ浜で生まれ育ち、現在に至っております。そのせいか、こと鎌倉よりは、七里ヶ浜の海がいちばん気に入っており、特に波のない穏やかな日に海岸の駐車場に腰をかけ、海を眺めているときが自分にとって何とも言えない嬉しい時間です。海が特にきれいだなと感じられるのは冬の海です。北風のせいでゴミは流れて来ませんし、大きな波の立たない穏やかな水面に日の光が反射して、絵のような美しさを見せてくれます。そんな景色は、冬のポカポカしているお天気のいい時、午前中にしても午後にしても夕方にしても、めったに見られるものではありません。長く住んでいるから見られる、大切な景色であるわけです。  ちょっとめずらしい仕事をしているせいか、時折テレビや雑誌の取材を受けることがあります。ですからそのときは、撮影場所を必ず七里ヶ浜の海岸と指定いたします。バックに江ノ島、遠くに富士山と伊豆半島が墨絵のように写り、いかにも湘南らしさが感じられるからです。ハワイの海とは比較になりませんが、日本のロケーションとしては、控えめに言えば、まあまあだと思います。  そんな好きな場所に居られて、好きな仕事が出来るというのは本当に幸せだと思います。普通仕事に行こうとすると、電車に乗って地下街を通ったりとか、バスに乗ったりとかして、仕事行くことになります。コンクリートの建物などは、どんなに便利がよいと言っても、人が作ったものでしかありません。私の今の生活は全くそういうものとは関係ないところで進んでいます。作業は表で行いますから、寒いときは寒いように、暑い時は暑いように。風景も含めて自然の中で仕事と生活が出来ることは、私にとってとても大事なことなのです。  ところで私は「七里ヶ浜と鎌倉」について不思議な感覚を持っています。市内であるにもかかわらず、鎌倉には遠いイメージがあるのです。私が小学生のころ、毎年お正月に江ノ電に乗り鎌倉駅から八幡様まで歩いてお詣りにいきました。七里ヶ浜から鎌倉に行くのも、毎年この一度だけであり、子供の頃の思いが残っているからでしょうか、いまだに鎌倉は遠い場所だという感覚があるのです。  現在も自宅で仕事をしており、一年を通しても鎌倉駅附近へ行くことは10回以下ですから、子供の頃と変わりありません。このような訳ですから、私には常に鎌倉と距離感があるのです。書類や手紙に住所を記載するとき、鎌倉市七里ヶ浜と書くより、湘南七里ヶ浜と書きたいのは私だけでしょうか。
▲TOP

Copyright (C) Kamakura Citizens Net / Kamakura Green Net 2001 All rights reserved.