鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第8回 My 鎌倉
今回のゲスト
神田伯龍さん(講談師)
 講談師の六代目神田伯龍さんは、鎌倉に魅せられ、平成3年にこの地に移り住んでいらっしゃった方です。今でもちゃきちゃきの江戸弁をお使いになりますが、気持ちは既に江戸っ子ならぬ鎌倉っ子。今年芸歴60周年を迎えられ、CDのリリースなど、精力的な活動を計画していらっしゃるとのことです。

「江戸っこから鎌倉っこへ」

 私が鎌倉に住み始めて7年目になります。  子どもの頃から、鎌倉が好きで、小学校時分から一人で鎌倉に来てはあっちこっち歩いていました。私の生まれた家は東京の大森海岸で料亭をしていて、おこづかいなんてくれませんでしたから、銭箱からお金を掴んで、週末ごとに鎌倉に遊びに来ていたんです。鎌倉という街の持つ、その雰囲気が好きでした。山の上に登って、海を見たりするだけで楽しかったものです。その頃から、やがていつの日にか、鎌倉へ引っ越そうという気持ちを持っていました。たまたま鎌倉の方とお酒を飲んでいるときに「どう家買ってくんない」っていう話が出て、5分で決めてしまいました。妻はずいぶん驚いていましたけど。  私はあまりにぎやかな所は得意ではありません。普段大勢の人様の前で仕事をするからでしょうか。ですから、静かな、いかにも鎌倉らしいといった道を好んで歩きます。まず、鎌倉郵便局の横から入っていく本覚寺。そのまま進んで右に夷堂橋を渡った正面の妙本寺。妙本寺からさらに右へ曲がると常栄寺という、小さなお寺があります。このお寺は日蓮上人の有名なぼたもちの故事から、ぼたもち寺ともいわれています。私はこの常栄寺が特に好きです。この頃はお客様も大分いらっしゃるようですけど。私はお参りをするわけでもなく、境内をブラブラ見て回ります。そんなことだけで、心が非常に落ち着くからです。庫裡もきれいになりましたし、山門もいかにもぼたもち寺という山門で、趣があります。  実際住んでみると、鎌倉は静かで、空気もきれいなところです。何となく仕事に行くのが嫌な所です。何にもしなくて、ここで美味いものこさえて食べて、本を読んでいられれば最高です。旬の魚などもたいへんおいしい。「眼には青葉 山時鳥 初がつを」という句の初鰹も、この鎌倉から出荷したものだという程ですから。私の今住んでいるところは漁師町ですから、気が合うんです。生まれの、大森という町も漁師町ですから。ですから、孫の代まで住みたいところだと思います。私はここを終の棲家と決めて、越したとたんに本籍も全部変えてしまったほどですから。江戸っ子ではなく、鎌倉っ子になってしまったわけです。最近、土地の人からやっと「そろそろ地物になったな」と言ってもらえました。顔がね潮焼けしてきたからだそうです。でもここは三代住まないと地の物じゃないって言うんですよね。まだ、そろそろ地物になりかかった程度だということらしいです。道のりは長いようです。
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