鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第3回 My 鎌倉
今回のゲスト
小澤正典さん(鎌倉彫宗鶴堂代表)
 生粋の鎌倉っ子である小澤さんに、子供のころから親しんだ山道の楽しみ方を伺いました。また、鎌倉彫の匠でもある小澤さんの教えてくださる正しい鎌倉彫の楽しみ方は、思わずお店に足を運びたくなること請合いです。

「自然を足の裏で確かめる」

 私は鎌倉で生まれ、鎌倉で育ちました。ですから今回ご紹介する場所は、子供のころによく訪れた、葛原岡の辺り、大仏から源氏山に至る散策コースです。  このコースは朝出発して大仏あたりから上がっていくと、丁度葛原岡から源氏山の当たりでお昼になり、休むには具合がいい行程だといえます。その後は明月院の方に行ってもいいですし、銭洗弁天に降りるのもいいでしょう。普通の方が辿るのと逆のコースを上り、人出を見て、どちらに行くかを決めるのが気楽でいいと思います。この辺りは木々の隙間から海を垣間見ることのできる、眺望のすばらしい場所です。  しかし、大仏から葛原岡に至るコースには、私が風景よりも楽しみにしていることがあります。大仏のトンネル付近を抜けると、木が茂っていて別世界にいるような気持ちになります。そういう場所での楽しみは、木の根っ子を足場にして歩くことです。足を木の根に掛ける感触。子供を連れて自然を観察するには一番良い場所だと思いますし、もちろん大人の私もそういう歩き方を楽しみにしてこのコースを歩きます。  また、家が谷まで入っていますから、家の声もポツポツ聞こえますし、お仕事をしている音も聞こえるので、さほど寂しい場所という感じもありません。昔から、子供だけで出かけても安心なの場所なのです。  また、自然の豊かな鎌倉のもう一つの横顔は、伝統を今に伝えるという古都の顔といえます。伝統的工芸品である鎌倉彫のお店を訪れることも、また鎌倉の楽しみになると思います。鎌倉彫には問屋というものがありませんから、私の営む宗鶴堂のように、職人がお店を構えているんです。職人の立場からいえば、手仕事のものというのは店で陳列してあるものを見るのではなくて、自分で見て、納得してもらうのが一番大切だと思っています。漆の光沢も光線の加減によって違いますし、天然木ですから、例えば同じ尺盆でも重さは微妙に違います。手仕事のそんな微妙な差異を知ってもらうには、手にとってもらうしかありません。鎌倉彫の楽しさ、楽しみ方はあまりに多くて、ここでは書き切れません。 一度店を訪れて、そんな職人のこだわりをゆっくりと聞くと、鎌倉彫り奥の深さを満喫できることでしょう。 宗鶴堂は門のある一軒家の体を成してありますが、お店ですから、もちろん買わないで帰っても構わないんです。知人の家に遊びにくる感覚で覗いてみてください。
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