第84回 My 鎌倉   logo1
今月のゲスト

田辺 四郎 さん

鎌倉ジュニアオーケストラ代表兼指揮者

[2015.2.24]
田辺四郎さん

たなべ しろう さ んのプロフィール
昭和 5年(1930年)  川崎市に生まれる。
昭和22年(1947年)  川崎市の小学校教員になる。
昭和35年(1960年) 国立音楽大学夜間部へ入学
昭和42年(1967年)  鎌倉市へ移住 
昭和55年(1980年) 鎌倉市立深沢小学校へ転勤
昭和59年(1984年)  鎌倉ジュニア・アンサンブル結成 
昭和62年(1987年)  鎌倉ジュニア・オーケストラに改名 
平成 2年(1990年)   教員を退職 
平成22年(2010年)  鎌倉市政功労賞受賞 


オーケストラ 田辺さん



音楽との出会い
 
 昭和22年に17歳で川崎市の小学校教員になりました。戦後間もない教員不足の時代でした。赴任した学校にピアノがあり、生まれて初めてピアノを見ました。触ると非常に良い音がして、それでピアノに夢中になり、毎日毎日自己流でピアノの練習をしました。

 最初の十年間は担任を持って全教科教えていました。合唱や合奏が好きで音楽の授業に力を入れていたので、11年目からは音楽専科の教員になりました。そして30歳の時に国立音楽大学の作曲科の夜間部に入学しました。作曲科を選んだのは、音楽の事を基本から知りたいと思ったからです。その頃は国立音楽大学に夜間部があったので、昼間は川崎で小学校教員、夜は国立まで遠路はるばる通って音大生、その生活が7年程続いた後、音大を卒業しました。国立音楽大学夜間部の最後の卒業生です。



鎌倉へ

 川崎市南部に住んでいましたが、高度経済成長期でしたから、公害で空気が悪く、子どもはお医者さんと縁が切れない生活でした。成城、百合ヶ丘等いろいろまわりましたが、空気がよく自然の多い鎌倉が気に入り、昭和42年に鎌倉市梶原に移住しました。鎌倉に来た時に、外のベンチを触っても手が汚れないほど空気が澄んでいることに感動しました。最初は鎌倉の自宅から川崎の学校に通っていましたが、満員電車での通勤が大変になり、50歳の時に鎌倉の学校への転勤を希望しました。そして昭和55年に赴任したのが鎌倉市立深沢小学校です。深沢小学校で4年、御成中学校で6年間、音楽専科の教員として鎌倉市で勤務しました。



オーケストラを作りたい!

 川崎で勤務しているころから、オーケストラを作ることは夢でした。
深沢小学校に赴任して3年目のある日、NHKの「音楽の広場」(司会-芥川也寸志さん・黒柳徹子さん)という音楽番組で千葉県習志野市立谷津小学校の音楽クラブのオーケストラがベートーベン作曲のエグモント序曲を演奏しているのを観て驚愕しました。力の入った、小学生とは思えない素晴らしい演奏で、司会の黒柳徹子さんが涙を流して感動されていたのを覚えています。

 衝撃を受けた私も早速、谷津小学校の指揮の先生に会いに習志野に赴きました。その時に生で彼らの演奏を聴きましたが、その迫力には腰が抜ける思いがしました。そして、是非深沢小学校でもやりたい!深沢小学校の生徒たちならできる!という思いを新たにしました。何しろ、その時の深沢小学校の生徒たちはみな音楽の技術が高く、よい演奏していましたから。こうして、昭和59年「鎌倉ジュニア・アンサンブル」、現在の「鎌倉ジュニア・オーケストラ」を発足させました。

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オーケストラ誕生

 オーケストラを作りたいことを伝えると、深沢小学校のPTAコーラスの方々が「それならばぜひ手伝います!」と、あっという間に大勢の方が名乗りを上げてくださり、運営組織ができあがりました。その組織は30年たった今も引き継がれています、そのおかげで今までオーケストラを続けることができたと思っています。

 楽器は共済組合等から300万円借金して、弦楽器・管楽器を中心に揃えました。それでもオーケストラにはたくさんの楽器が必要なので足りず、運営委員の方々がつてを頼りに借り集めてくださいました。オーケストラの指導をするにあたり、私もバイオリンとチェロを習い、毎日夢中で練習しました。

 練習場所はなかなか見つからず、ずいぶん探しましたが、常盤の聖ミカエル学院幼稚園の当時の園長先生が音楽に理解のある方で、ご厚意で幼稚園のホールと楽器を置くスペースを貸してくださいました。以降22年間もの間ミカエル幼稚園を拠点に練習しました。



鎌倉ジュニア・オーケストラの変遷
  ポスター ポスター
 
 その後、ヤマハミュージック横浜 藤沢センターを経て、現在は藤沢駅北口近くの新堀ギターのライブ館で週二回練習しています。

 設立前は一つの小学校の中で行う楽団を想定していましたが、様々な方の協力のもと大きな組織へと発展していきました。2015年2月現在、鎌倉市を中心にその周辺に住む小学二年生から高校二年生まで、約80名の団員がいます。発足当初から「音楽の好きな子なら誰でも入れる」とうたい、初心者から入団を受け付けています。はじめ管楽器とバイオリンに一人ずつだったトレーナーも現在は各楽器に数名ずつ、総勢30名にのぼります。

 第1回定期演奏会は、深沢小学校の体育館で行いました。弦楽器は練習を始めて間もない時でしたから「きらきらぼし」のような易しい曲を演奏しました。その後定期演奏会は毎年行い、昨年30回を数えました。曲も大曲が増え、思い出のエグモント序曲も演奏しています。



その他の活動-鎌倉吹奏楽団ミュージックファーム
    
 昭和59年から6年間は御成中学校の音楽教員として吹奏楽部の顧問にもなりました。その間に御成中学校吹奏楽部は関東大会に出場する等素晴らしい成績を残しました。その時にトランペットを吹いていた生徒が平成7年に立ち上げたのが鎌倉吹奏楽団ミュージックファームです。様々な年齢の学生や社会人が演奏している楽団で、設立当初から常任指揮者を務めています。平成27年の今年は20周年の記念の年で、既に2回の演奏会が鎌倉芸術館大ホールで決定しています。鎌倉ジュニア・オーケストラは管弦楽、ミュージックファームは吹奏楽、それぞれ趣が違います。



編集後記
   クリスマスコンサート  

 12月23日、深沢冬まつりの鎌倉ジュニア・オーケストラクリスマスコンサートのリハーサル前に田辺先生を訪ね、取材をしました。30歳で音大に入学されたこと、鎌倉ジュニア・オーケストラを作ったきっかけ等興味深いお話で瞬く間に時が過ぎました。そして、クリスマスコンサート本番、クリスマスの衣装を身にまとった可愛い演者が奏でる管・弦・打楽器の心地よい音色と、タクトを振る田辺先生のやさしい笑顔に、音楽がますます好きになったクリスマス間近の一夜でした。


リンク集
鎌倉ジュニアオーケストラ
鎌倉吹奏楽団ミュージックファーム


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